韓国Samsung Electronicsが米Appleのモバイル関連特許を侵害したとして米国際貿易委員会(ITC)が下した一部Samsung製品の輸入差し止め命令を米通商代表部(USTR)が支持したと、複数の米英メディア(Wall Street JournalNew York TimesInfoWorldFinancial Timesなど)が現地時間2013年10月8日に報じた。

 Appleは4件の特許を侵害されたとしてSamsungを提訴し、ITCは2013年8月にSamsungによる2件の特許侵害を認める判決を下した。問題の2件は、イヤホンジャックに関する特許と、タッチ操作に関する特許。USTRはITCの判決後60日以内に拒否権を発動できるが、「ITCの判断を覆す政策的根拠はない」として、拒否権を発動しないことを決定した。

 Michael Froman代表は「消費者や競争への影響、関連当局からの助言、関係者からの情報などを慎重に検討した結果、ITCの判断を支持することを決定した」と説明している。

 SamsungはUSTRの決定に「失望している」との声明を発表。同社広報担当者は「今回の決定は競争を衰退させ、米国消費者の選択肢を制限するだけだ」と述べた。なおAppleからのコメントは得られていない。

 Samsung製品のどれが差し止め命令の対象となるかは明らかにされていない。当初Appleが特許侵害にあたるとしたのは2011年以前にリリースされた「Galaxy S 4G」「Captivate」「Galaxy Tab 10.1」などの製品だが、SamsungはすでにAppleの特許を回避する技術を新型端末に組み込んでいる。差し止め命令はSamsungの旧型スマートフォンおよびタブレット端末が対象で、現在販売されているSamsung製品への影響はごくわずかと伝えられている。

 両社の特許関連の係争を巡っては、AppleがSamsungの特許を侵害したとして一部Apple製品の米国輸入および販売を禁じたITCの命令に対し、USTRが今年8月、拒否権を発動している。その際Froman代表は、公正で合理的かつ差別のない(FRAND:Fair, Reasonable, and Non-Discriminatory)条件のもとで他社にライセンス供与する標準必須特許に関する米政府の方針を考慮した上での判断だと述べていた(関連記事:Samsungとの特許訴訟でAppleに下された輸入販売禁止命令、米政府が拒否権発動)。