米国家安全保障局(NSA)が匿名通信システムの傍受も試みていたと、複数の米英メディア(InfoWorldThe Registerなど)が現地時間2013年10月4日に報じた。英Guardianが、NSAの通信情報収集プログラムを告発した元米中央情報局(CIA)職員Edward Snowden氏から入手した書類により判明したとして伝えたもの。

 Guardianによれば、NSAは通信経路を隠蔽できるソフトウエア「Tor」をベースにしたネットワークを攻撃して、ユーザーに関する情報を入手しようとした。「Firefox」ブラウザーなどソフトウエアの脆弱性を突いて、Torユーザーのコンピュータを完全に制御する方法を開発したという。

 しかしNSAはTorシステムの根本的なセキュリティを破ることはできなかったようで、NSAの内部文書には「全Torユーザーの匿名性を解くことは不可能」との報告がある。「手動による分析で、ごくわずかなユーザーの匿名解除はできる」ものの、特定の要求に応じたユーザーの匿名解除には成功していない。なお、NSAが利用したFirefoxの脆弱性は2012年11月に修正されている。

 Torに対しては開発費の約60%を米政府が拠出し、主に米国務省と、NSAが属する米国防総省が出資した。米国や西欧のほか、中国、イラン、シリアのジャーナリストや政治活動家などが、主に政府の検閲などを避けるために利用している。

 また告発書類から、英政府通信本部(GCHQ)もTor攻撃に取り組んでいたことが分かったという。NSAとGCHQは、Torがテロリストや犯罪者にも使われていると、情報収集の必要性を主張している。