「スーパーマーケットに行っても、そこに1機種しか売っていなければ買い物の楽しみが無くなる。今回は“選べる自由”の原点に戻って、たくさんの機種を揃えた」――。2013年10月2日にKDDIが開催した新商品発表会で、同社の田中孝司社長(写真1)はこう狙いを説明した。

「“選べる自由”がない」という夏モデルでの声に応えた

写真1●2013年冬モデルを発表するKDDIの田中孝司社長
写真1●2013年冬モデルを発表するKDDIの田中孝司社長
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 KDDIが冬モデルとして発表した機種は、スマートフォンが6機種、タブレット1機種、フィーチャーフォン2機種、フォトフレーム、GPS端末、モバイルルーターがそれぞれ1機種ずつと多岐にわたる(写真2)。わずかスマホ4機種にラインアップを絞った夏モデルの時と比べて、大幅にラインアップを拡充した格好だ(関連記事:モバイルネットワーク、競争の裏側[1]スマホ戦略が早くも曲がり角、ネットワークが最大のポイントになった理由)。今後、春モデルも、追加で端末や新サービスの発表を予定しているという。

 「夏モデルを発表後、auは“選べる自由”とうたっているのに、選べないよねと多くの人に言われた。それでは確かにいけないと思い、今回は頑張ってラインアップを拡充した」(田中社長)。

写真2●2013年冬モデルのKDDIのラインアップ。夏モデルのスマホ4機種から、大幅にラインアップを拡充した
写真2●2013年冬モデルのKDDIのラインアップ。夏モデルのスマホ4機種から、大幅にラインアップを拡充した
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 KDDIのラインアップは、2日前に冬春モデルの新商品発表会を開催したソフトバンクモバイルと比べても対象的だ。ソフトバンクモバイルは冬春モデルとして、わずか4機種のスマホと2機種のフィーチャーフォンなどを揃えるにとどめた(関連記事:ソフトバンクが2013、14年冬春モデル発表、スマホは4機種で「絞り込み」へ)。同社の孫正義社長は「ドコモが“ツートップ”戦略を取ったように、今や端末を絞り込んで重点的に訴求していく時代になった。携帯会社を選択する上では、ネットワークの優劣、様々なサービス、コンテンツが差別化がポイントになる」と、端末ではもはや差別化できないというポジションを見せる(関連記事:つながりやすさのアピールに終始、ソフトバンク新商品発表会で孫社長の一問一答)。

 確かに今回KDDIがラインアップした端末も、3社が取り扱うiPhone 5s/5cを始めとして、NTTドコモが冬春モデルとして取り扱うことが濃厚なソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia Z1」、韓国サムスン電子製の「GALAXY Note3」など、決して”KDDI独占”の端末ではない。この点について田中社長は「機種によっては向こう(ドコモ)が扱う台数が多いシーズンがあったり、うち(KDDI)が多かったりするが、他社はあまり意識していない。スマホは急速にグローバル化が進んでいるが、できるだけ自分たちで開発できる部分を続けて行きたい。ここで折れるとダメだと思っている」と話す。

 実は今回の冬モデルでKDDIは、韓国LGエレクトロニクスと共同開発し、デザインとユーザーエクスペリエンスにこだわった「isai」というスマホをラインアップに加えている。グローバル化の波が押し寄せているスマホであっても、できるだけ自分たちのアイデンティティーを見せていこうというこだわりを見せる。