写真●NTTデータの岩本敏男社長
写真●NTTデータの岩本敏男社長
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 「アジアは世界の中で大きな市場になるポテンシャルを秘めている。アジアビジネスは(目先の利益にとらわれず)10年先を見て思い切った投資をしていきたい」。NTTデータの岩本敏男社長は2013年9月27日、タイの首都バンコクで同社が開催した記者会見で、こう強調した。アジアでの事業拡大に向けて、M&A(合併・買収)を仕掛けていく意向があることも表明した。

 岩本社長はNTTデータの海外戦略について、「8年ほど前からグローバル化を強化してきた結果、IT企業のM&Aなどによって、海外の拠点網は34カ国、136都市まで拡大し、海外売上高は2012年度で2300億円まで伸びた」とした上で、「3年後にはこれを3500億円まで増やしたい」と続けた。

 ただ、売り上げの絶対額で見ると、欧米に比べてアジアの事業規模はまだ小さい。短期的な収益確保と中長期的な投資のバランスをどう取っていくかという記者の質問に、岩本社長は「とても難しい問題だ」と述べ、「日系企業の現地ビジネス支援と、欧米グローバル企業のアジアでのビジネス支援によって短期的な収益を確保しながら、中長期的なビジネス拡大に向けた投資をしていきたい」と答えた。

 記者会見に先駆け、岩本社長はバンコクで開催されている「アジアICTカンファレンス」に登壇し、「加速する技術進化が創り出す近未来の社会」と題する講演を披露(写真)。「これから5~10年のうちに、ITの進化によって、これまでとは比較にならないほどの大きな社会変化が起こるだろう」と述べた。

 現在のスマートフォンやタブレットの全世界での爆発的な普及について、岩本社長は「5年前は今の状況を予測できなかったはずだ」と強調し、「今後の社会変化は、さらに速まるはずだ」と続けた。その根拠として、ITの進化スピードが指数関数的に伸びていることを挙げた。「CPUとストレージ、ネットワークの3大要素が特に急速に発展している」。

 今後の注目技術として、岩本社長は「マン・マシン・インタフェース」や「ウエアラブルコンピューティング」、脳の動きを基にコンピュータを動かす「ブレイン・マシン・インタフェース」などについて言及した。「今や企業活動はもちろん、政治や経済、芸術、スポーツの領域まで含め、社会中のあらゆるところでICTが重要になっている。そのような時代に、企業が自社のビジネスを強化するためにICTを活用する取り組みを支援していきたい」と語った。

 アジアでの事業拡大に向けた戦略については、「日本や欧米など世界のベストプラクティスを(アジアに)持ち込む取り組みを強化したい」と説明した。日本で開発した航空機の飛行経路設計システム「PANADES」をインドネシアやベトナム、タイ、ラオスの政府機関などに提供した実績を例に、こうした取り組みを増やしていきたい考えを明かした。このほか具体的な注力分野として、ビジネスアナリティクス(BA)、クラウド、セキュリティ、モバイル関連事業、アウトソーシングを挙げた。