スルガ銀-IBM裁判の控訴審で、東京高等裁判所は2013年9月26日、日本IBMに約42億円の賠償を命じる判決を下した(関連記事)。この金額は、一審判決で東京地裁が示した賠償額の6割未満である。

 今回の二審判決のポイントは、日本IBMが支払うべき賠償の範囲を、システムの要件定義を経て「約90億円で新システムを開発する」という最終合意書を交わした2005年9月末日以降の費用に限定したことである。一審判決では、システムの企画設計から要件定義、開発中止に至るまで、スルガ銀行が日本IBMなどに支払った費用全額を賠償として認めていた(関連記事)。

 東京高裁は今回、プロジェクトの各段階において、システム開発に際してITベンダーが負うべき「プロジェクトマネジメント義務」の違反に当たる行為が日本IBMにあったかを検討。日本IBMがパッケージソフト「Corebank」を提案した企画・提案の段階と、最終合意書を交わす以前の要件定義の段階では、日本IBMに同義務の違反に当たるほどの過失はなく、不法行為は成立しないとした。この点について東京高裁は、システム開発プロジェクトは初期段階では一定の不確実性が避けられず、ユーザー企業も提案を受けたパッケージソフトについて自ら分析を行うなど、応分のリスク負担が求められると判断した。

 一方で、当初の要件定義を終了した後、少なくとも最終合意書を交わした2005年9月末日の段階では、日本IBMにプロジェクトマネジメント義務違反があったと認めた。当初の要件定義で、想定する要件とパッケージソフトのギャップが予想外に大きいことが明らかになったにも関わらず、日本IBMがシステムの抜本的な変更、中止を含めた説明や提言、具体的なリスクの告知を行わないまま最終合意書を結んだことが、同義務違反に当たるとした。