寝室のベッドに寝っ転がりながら、スマートフォンとつないだヘッドマウントディスプレイを頭にかぶり、映画やゲームの世界に“没入”する。まさに、自分だけの「持ち運べる映画館・ゲームセンター」とでもいうべき製品──。

 ソニーは2013年11月中旬、ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T3W/T3」の2機種を発売する。この製品は、頭にかぶって前方のレンズをのぞき込むと、まるで映画館のような仮想の大画面(750インチ相当)が目の前に広がり、迫力ある映像を楽しめるというものだ。

 2011年に発売した1世代目は当時、「久しぶりにソニーらしい製品が出てきた」と大きな話題になり、品切れが続いたヒット商品である。映画やゲームが好きな男性を中心に、熱狂的なヘッドマウントディスプレイのファンを生み出した。

 最近話題の身に付けるデジタル機器の先駆けであり、ソニーは「ウエアラブル映画館」という新ジャンルを作り出したといえる。この製品については事実上、競合がいないような状態である。“映画館”を作るにはソニーの総合力が必要で、「ワンソニー(One Sony)」の象徴的な製品でもある。

 今回のHMZ-T3W/T3は2012年に出した2世代目に続く、3世代目に当たる。搭載する有機ELパネル以外は、外観も機能も全面的に刷新したフルモデルチェンジ機だ。ソニーは今回、ヘッドマウントディスプレイの専用LSIまで開発している。

写真1●3世代目のヘッドマウントディスプレイを頭に装着したところ。バッテリーユニット(手前左)にスマートフォン(手前右)を接続すれば、ネット動画などを大画面で楽しめる
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 最大の特徴は、上位機種T3Wで実現したワイヤレス対応(WirelessHD)であり、そしてT3W/T3の両方が備えるスマホとの連携機能だ(写真1)。これにより、冒頭のような利用シーンが現実のものになった。

 いつも自分の手元にあるスマホから映像を取り出そうと考えるのは、消費者にとって今や自然な流れだ。こうした日常に利用シーンを広げることで、ソニーはヘッドマウントディスプレイを一部の熱烈なファンだけではなく、まだヘッドマウントディスプレイの存在を知らない消費者にまで広げたいと考えている。

 スマホとつながる「どこでも映画館」が大きな売り物なだけに、利用場所は自宅にとどまらない。(周りからの好奇の目を気にしなければ)、例えば飛行機や新幹線の中でもスマホの映像を大画面で楽しみながら、長距離移動することが可能だ。

 使い方をより正確に説明すると、ヘッドマウントユニット本体につながる「バッテリーユニット」にスマホやタブレット、パソコンなどをMHLケーブル/HDMIケーブルでつないで、YouTubeなどの動画を楽しむことになる。また、T3Wはブルーレイディスクプレーヤーやゲーム機などに接続する「プロセッサーユニット」と、先ほどのバッテリーユニットの間が無線通信になっている。映像と音声を非圧縮で無線伝送できるため、画質や音質の劣化がほとんどなく、約7mの範囲内ならワイヤレスで利用できる。ヘッドマウントディスプレイをかぶったまま、ちょっと部屋の中を歩くことができるわけだ。