各種調査とデータベース販売を手がけるナビットの主催で2013年9月12日、「屋内測位技術&活用セミナー」が都内で開催された。いくつかの屋内測位技術と同時に、実際のサービス応用例などが紹介された。

写真1●「ショッぷらっと」の概要
写真1●「ショッぷらっと」の概要
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 NTTドコモ スマートライフ事業部 ビジネス基盤推進室 担当部長の斎藤剛氏は、同社がO2O(オンライン・トゥ・オフライン)分野の開拓を狙って開始した「ショッぷらっと」について説明した(写真1)。

 ショッぷらっとの特徴は、屋内測位技術を応用し、人には聞こえない音波を使って利用者を検知する点だ。対象店舗には音波発生装置を設置。スマートフォンのアプリを立ち上げている顧客が装置から10m以内に近づくと、スマホ付属のマイクロフォンが音波を検知し、来店するだけでたまる独自のポイント(商品券やギフトカードなどと交換可能)やクーポン、セール情報を提供する。こうして顧客に店舗での購買を促す仕組みだ。2013年2月20日に試験サービスを開始し、9月1日から正式サービスをスタートした(関連記事:ドコモが渋谷などで音波チェックインを使ったOtoO実験、店内10m圏の顧客にクーポン配信)。

 加盟店には、プラットフォームの利用料金として月額1万円、送客手数料は1チェックインあたり30円、利用者がチェックインした際に付与するポイント(1P=1円)は、付与したポイント分の費用がかかる(参加店舗数1店舗、音波機器設置1カ所の場合)。

 斎藤氏は音波を選んだ理由として「10mの距離で情報配信できることが一つ。加えて、この先スマートフォンが進化しても、マイクがなくなることはないだろうと考えた」と説明した。ビジネスの現況に関しては「現在の加盟店は約800店舗。多種多様なテナントが入居している大手百貨店からの評価が高い。飲食店からも、思いがけず高い評価を受けている。というのは、男性客は昼食時に店を決めていないことが多く、ポイントで誘導できるからだ」と述べた。

 今後の展開としては、「来店客の行動を可視化することで、いろいろな“おもてなし”の仕掛けができるのではないか。また、店への誘導だけではなく、入店した客を特定の棚に誘導することも可能だと思う」と解説。店舗以外では、博物館の展示情報を配信するなど、様々な展開を考えているという。

無線LAN APからの電波強度を測定し、高精度で位置把握

写真2●PlaceEngineについて説明するクウジット取締役CTOの塩野崎敦氏
写真2●PlaceEngineについて説明するクウジット取締役CTOの塩野崎敦氏
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 続いて、クウジット取締役CTOの塩野崎敦氏が無線LANによる測位技術と同技術を利用した同社のソリューション「PlaceEngine」について解説した(写真2)。スマートフォン側で、現在検知された無線LANアクセスポイント(AP)の電波強度を測定。APの位置情報と強度から、現在位置を推定する。「仮に15m四方のエリアならば、4個APを設置して5m四方の精度で位置情報を得られる」(塩野崎氏)。

 また、昨年2月に岐阜中央病院で行った実証実験では、PlaceEngineと他のセンサーを使って職員の行動調査を実施した。無線LAN APを150台設置。対象職員数は200人に上った。その結果、「看護師はナースステーションでの滞留が多く、ヘルパーは食堂での滞留が多いことなどが判明した」(塩野崎氏)という。さらに、APのビーコン信号を測定して測位に利用する「Network PlaceEngine」について、同社が今年度中の商用展開を目指している旨を報告した。