世界120カ国以上で事業を展開し、海外たばこ事業が利益の半分以上を占める日本たばこ産業(JT)は、ITをどのように位置づけているのだろうか──。

 2013年9月11日から30日までネット上で開催されているバーチャルイベント「ITmedia Virtual EXPO 2013」にて、JT IT部 部長の引地久之氏が同社のIT戦略を語った(こちらのサイトから視聴可能)。

 JTは海外でも積極的にM&A(企業の合併・買収)を行っているため、ITの標準化は不可欠だ。ただ引地氏によると、海外では多くの地域でグローバルスタンダードの標準パッケージ製品を利用しているため、技術面ではそれほど苦労することはないという。

 むしろ、「各地域のビジネスプロセスや環境など、多様性を重視してそれぞれの地域に合った方法を調整するために時間がかかった」という。その際、日本から指示を出すよりも、実際に現地でビジネスを遂行している従業員が、仕事をやりやすいようにすることを重視したと引地氏は説明する。

 「JTの海外本社はスイスのジュネーブにあり、ヨーロッパ思考。各国の文化や働く人の融合を最優先に考えている。人を大切にして、それぞれが満足できるIT環境を導入することが、その後の運用にもプラスに働く」と引地氏は語る。

 JTでは、顧客、株主、従業員、社会の4者に対する責任を果たし、満足度を高めるという経営理念を掲げている。この理念の鍵となるのがイノベーションだという。

 イノベーションを起こすためには「使い勝手のいいシステムと、そのシステムを使う人と人とのコミュニケーションが重要。そのため、シングルサインオンや共通認証などを使って、世界中どこでも同じ環境で仕事ができ、コミュニケーションできるようなシステムを提供するようにしている」と引地氏。

 具体的には、マイクロソフトのSharePointやLyncといったコラボレーションプラットフォームをグローバル展開し、例えば介護や育児をしながらの勤務やBCP(事業継続計画)への対応など、様々なワークスタイルの実現を目指しているという。

 「JTはダイバーシティを尊重している。色々な文化や国の人が融合することで相乗効果を出し、ビジネスにおいて付加価値を提案できるような組織にしていきたい」(引地氏)としている。