「過去のリーダーは教え方を知っていますが、未来のリーダーは『聞き方』を知っています」──。「コーチングの神様」の異名を取るマーシャル・ゴールドスミス氏が、「マネジメントの神様」と呼ばれたピーター・F・ドラッカー氏から学んだことは、これだった。

 2013年9月11日から30日までネット上で開催されているバーチャルイベント「ITmedia Virtual EXPO 2013」で、米国における「エグゼクティブコーチングの先導者」と称えられるマーシャル・ゴールドスミス氏が基調講演を行っている(こちらのサイトから視聴可能)。同氏はこれまでFord Motorをはじめ、GoogleやUBSなどでエグゼクティブ開発に携わってきた実績を持ち、今も指導のために世界中を飛び回る。また、ピーター・F・ドラッカー財団の役員を10年務め上げた。

 ITmedia Virtual EXPO 2013でゴールドスミス氏は、ドラッカー氏から学んだ一番のエッセンスは何かについて、静かに、しかし、熱く語った。それが冒頭の言葉である。

 これからの時代、部下はボスよりも多くの(専門)知識を持っていることが多い。だからといって、部下は(頼まれもせずに)その知識をボスには教えてくれないだろう。そのため、ボスは常に「部下に話を聞かなければいけなくなる」わけだ。ボスは学び続けなければならないという。

 このドラッカー氏の指摘こそ、ゴールドスミス氏のキャリアに対する考え方を大きく変えた。しかも「よりポジティブな方向に発想を変えてくれた」と、同氏は説明する。

 ポジティブな発想が如実に表れているのが「フィードフォワード」というゴールドスミス氏の手法である。多くの企業で以前から実践されているフィードバックとは、対極的な取り組みだ。

 フィードフォワードとは「この先(自分が)どのように変わっていきたいか」を理解する手法のことで、2つのルールが存在する。1つは「他者から学ぶ」、もう1つは「他の人を助ける」。

 そのうえで、さらに2つルールがある。

 1つは「過去について、とやかく言わない」。つまり、過去のことに対してフィードバックしない。そしてもう1つは「人の意見を批評しない」ことだ。

 アイデアを尋ね、考え、そして感謝する。これがフィードフォワードのトレーニングであり、世界中の人たちが体験して「楽しかった」「ワクワクした」と回答したものであるという。その最大の理由は、過去ではなく「将来」に焦点を当てているからだ。