Wi-Fiアライアンスの「WiGig」ロゴ
Wi-Fiアライアンスの「WiGig」ロゴ
[画像のクリックで拡大表示]
Wi-FiとWiGigの両方に対応した製品用のロゴも用意した
Wi-FiとWiGigの両方に対応した製品用のロゴも用意した
[画像のクリックで拡大表示]
WiGigと無線LANのIEEE802.11n方式でファイル転送をした際のデモ。WiGigでは実効速度で60M~70MB/秒(480M~560Mbps)の速度が出ていた
WiGigと無線LANのIEEE802.11n方式でファイル転送をした際のデモ。WiGigでは実効速度で60M~70MB/秒(480M~560Mbps)の速度が出ていた
[画像のクリックで拡大表示]
デモに使われたWiGigの機能を搭載したアクセスポイント
デモに使われたWiGigの機能を搭載したアクセスポイント
[画像のクリックで拡大表示]
Wi-Fiアライアンス マーケティング&プログラムマネジメントディレクターのケリー・デイヴィスフェルナー氏
Wi-Fiアライアンス マーケティング&プログラムマネジメントディレクターのケリー・デイヴィスフェルナー氏
[画像のクリックで拡大表示]

 Wi-Fiアライアンスは2013年9月10日、最大7Gbpsの無線通信技術「WiGig」(ワイギグ)の認証ロゴを発表した。2014年前半にもロゴを付けた製品が登場する見通し。同アライアンスは認証プログラムを実施し、異なるメーカー間での相互接続を検証する。

 WiGigは60GHzの電波を使った無線方式で、理論上の通信速度が最大7Gbps。IEEE 802.11ad規格を基盤として、当初は業界団体のWiGigアライアンスが仕様を定めた。Wi-Fiアライアンスは2013年初頭にWiGigアライアンスを統合した。

 認定プログラムでは、機器間の相互接続や通信速度のほかセキュリティ機能などを検証する。Wi-FiとWiGigの機能を両搭載している製品では、Wi-FiとWiGigを自動で切り替える機能「FST(fast session transfer)」の搭載を必須とする。

 2015年以降には、業界団体のUSBインプリメンターズフォーラムやVESA(Video Electronics Standards Association)と協力しながら、USBケーブルやディスプレイケーブルを無線化する技術仕様を定める方針も明らかにした。

 WiGigの現状と将来展望について、Wi-Fiアライアンス マーケティング&プログラムマネジメントディレクターのケリー・デイヴィスフェルナー氏に聞いた。

●WiGigは従来の無線LAN(以下Wi-Fi)と比べてどんな違いがあるのか。

 WiGigは理論上の通信速度が最大7Gbpsと高速です。Wi-Fi方式の場合は最新のIEEE 802.11ac方式でも理論上の通信速度が1Gbps強です。ただし、WiGigでは通信できる範囲はWi-Fiよりも狭くなります。壁などの障害物があると届きにくくなるため、一つの部屋の中で使うものと考えてください。

 障害物の影響を受けやすいという弱点を補うため、指向性アンテナを使い、親機から子機へ強い電波を飛ばせるように自動調整する「ビームフォーミング」という技術をWiGigは備えています。親機と子機の間に人が通った場合でも、新しい通信経路が即座に確保されるため、通信が途切れにくくなっています。

 WiGigとWi-Fiの機能を両搭載した機器では、FSTという技術を搭載します。これはWiGigとWi-Fiの通信をスムーズに切り替える機能です。例えば、タブレットで映画を見ている場合、部屋の外に出てWiGigの電波が届きづらくなったときに自動でWi-Fiの接続に切り替えてくれます。切り替えは自動なので、ユーザーが特別な操作をする必要はありません。

●元々は別の団体だったWiGigアライアンスをWi-Fiアライアンスが取り入れた理由は。

 WiGigアライアンスでは技術的な仕様が固まったとき、テストや認証のプロセスを開発なければならなくなりました。ただ、実はWiGigアライアンスのメンバー企業の多くは、Wi-Fiアライアンスにも参加していたのです。そこで、別にやるよりも一緒にやったほうが効率的だろうということになったのです。WiGigはWi-Fiアライアンスにとっても魅力的な技術です。Wi-Fiの機能を補完し、ケーブルを置き換えるといった新しい用途を生み出せるからです。

●Wi-FiアライアンスのWiGigロゴを付けた製品はいつ登場するのか。

 既にWi-Fiアライアンスに所属するメンバー企業はロゴ認定プログラムに向けて製品の開発に着手しています。2014年に認定プログラムが開始されれば、その直後からロゴを付けた製品が発売となるでしょう。

●WiGig対応の製品はどんなものが登場し、どんな用途で使われるのか。

 まずWiGig対応の製品としては、パソコンにファイルを転送するためのアクセスポイントが登場するでしょう。テレビやセットトップボックス、パソコン、タブレットのほか、将来はスマートフォンなど小型機器にも搭載が進むと考えています。

 HDMIやDisplayPortのケーブルを無線化する「WiGig Display Extension」、PCI Expressを無線化する「WiGig Bus Extension」、SDカードを備えた機器とパソコンなどとの接続を無線化する「WiGig SD Extension」、USBを無線化する「WiGig Serial Extension」といった技術も開発を進めています。こうした技術の認定プログラムは2015年以降となる予定です。

 将来は、公衆無線LANスポットでも利用されるかもしれません。例えば、外出先で映画のデータを購入する際に、WiGigであれば高速に映像データをダウンロードできます。Wi-Fiで通信をしている周囲の人に影響を与えることもありません。

●ケーブルを置き換える無線方式ではWireless HDなどもある。WiGigの優位性は。

 WiGigはオープン化された業界標準の方式で、認証などのプロセスが確立されており、メーカーが対応製品を開発しやすいというメリットがあります。FSTのように、Wi-Fiと組み合わせて利便性を高められるという長所もあります。

●今後の目標は。

 2018年にはWi-Fi機器の3分の1がWiGigを搭載するというアナリストの分析結果があります。それを現実とするため、ユーザーに便利な機能を提供できるように、検証プロセスの整備を進めていきます。

●ほかの無線方式をWi-Fiアライアンスに取り込む可能性は。

 あらゆる無線方式を闇雲に取り込むわけではなく、ユーザーにとって利便性を重視したいと考えています。例えば、テレビの空きチャンネルの周波数帯を有効活用するホワイトスペース関連の技術や、屋外用センサーなどに使われるIEEE 802.11ahなどを今後取り込むことも考えられます。