ソフトバンクモバイルは2013年8月28日、東京都内の銀座、池袋周辺において実施している3.5GHz帯を利用したLTE-Advanced(LTE-A)のTDDによる実証実験を、関係者に向けて公開した。

 LTE-Aとは、現行のLTEをさらに進化させた技術。LTE-Aに含まれる要素技術としては、2011年6月に標準化を完了した3GPP Release 10に含まれる、複数のキャリアを束ねて最大100MHz幅に広帯域化できる「キャリアアグリゲーション(CA)」や、セル間干渉技術「eICIC」、さらに2013年3月に標準化が完了した3GPP Release 11に含まれる複数基地局間の協調送信技術である「CoMP」などがある。LTE-Aでは、これらの技術を組み合わせて、現行のLTEの理論上の最大速度が300Mビット/秒のところ、1Gビット/秒以上もの速度を可能にする。

 ソフトバンクモバイルは今回の実証実験において、第4世代移動体システム(4G)向けの帯域としてモバイル向けの割り当てが検討されている3.5GHz帯、3480M~3560MHz帯の80MHz幅を、試験用免許として総務省から取得。ソフトバンクグループのWireless City Planningが展開する、TD-LTE互換のAXGP方式と同様の、TDD方式を用いて実験を実施した。

 今回の実験は、ソフトバンクグループなどが中心となってTDD方式を推進する業界団体「GTI(Global TD-LTE Initiative)」(関連記事)のアドホックセミナーの開催に合わせて開催。セミナーには、世界各国からTD-LTEを推進する通信事業者や、TD-LTEのエコシステムと接近しているWiMAX陣営の関係者(関連記事)、通信機器ベンダー、チップベンダーなどが参加していた。ソフトバンクグループやGTIの狙いは、3.5GHz帯においてTDDのエコシステムをいち早く広げることだろう。

 今回、プレス関係者として唯一デモを実際に見ることができたので、その様子を紹介する。

“オキポン構成”で3.5GHz帯実験基地局を構築

写真1●今回の3.5GHz帯を用いたLTE-A TDDの実証実験のネットワーク構成
写真1●今回の3.5GHz帯を用いたLTE-A TDDの実証実験のネットワーク構成
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 今回の実証実験は、銀座地区、池袋地区の2カ所に分けて実施。銀座地区は中国ファーウェイの機器、池袋地区は中国ZTEの機器を使用しており、地域によってベンダーが分かれている。同社によると、現時点では中国ファーウェイの機器のほうが完成度が高いという。

 筆者がデモを見たのは、ファーウェイの機器を使った銀座地区である。銀座地区は「日本有数の高トラフィックエリアであり、なおかつカバレッジしにくいチャレンジングなエリア」(同社の説明員)。そんな銀座の8丁目から4丁目にかけての500メートル四方のエリアに合計9局、マクロ基地局を8局、ピコ基地局を1局立ち上げて、3.5GHz帯の試験用のネットワークを構築した(写真1)。各基地局間の距離は平均200メートルであり、すべての基地局が銀座のビルの屋上にある、見通し外通信(Non Line of Sight)となっている。