図1●会見で想定される原因について語る宇宙航空研究開発機構(JAXA) イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏
図1●会見で想定される原因について語る宇宙航空研究開発機構(JAXA) イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏
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図2●会見に臨む山本一太内閣府特命担当大臣(宇宙政策)
図2●会見に臨む山本一太内閣府特命担当大臣(宇宙政策)
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 地上の計算機がロケットの姿勢〔ロール角:長手軸周り〕異常と判断してシーケンスを停止させた。宇宙航空研究開発機構(JAXA) イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏は、2013年8月27日に予定していたイプシロンロケット試験機の打ち上げが中止となった経緯をこのように語った(図1)。イプシロンロケットでは、機体と地上にそれぞれ計算機を持ち、機体側の計算機が姿勢センサ(ジャイロ)の出力値を基にロケットの姿勢を計算し、地上の計算機に送るようになっている。地上の計算機では、受け取った姿勢のデータが所定の設定値に入っているかどうかを確認し、異常があれば打ち上げのシーケンスを停止させる。今回の中止は、この地上の計算機で実施する設定値との比較においてロール角が所定の範囲から「1°ぐらいずれていた」(同氏)ためという。

 同氏によれば、ロケットの機体は全く動いておらず、機体そのものには異常はなかった。また、「ロケットの状態はテレメータで常時監視しており、(それとの比較から)姿勢センサ側での問題でもないと考えている」(同氏)という。まだ、原因究明の過程で、はっきりとした原因は分かっていないが、機体の計算機から地上の計算機に計算結果を受け渡す過程で何らかの問題が生じた可能性があるという。今のところ、地上の計算機における計算プロセスに問題はなかったと考えている模様だ。

 森田氏は、記者会見の中で、「期待されているイプシロンロケットの打ち上げを中止したので、問題は深刻ではないとは言えないが、すぐに対策ができるものと考えている」と語った。また、次の打ち上げの日程に関しては、「現状では分からないが、原因究明、対策、点検に少なくとも2日間はいただきたい」とした。

 ロケットの打ち上げシーケンスが止まったのは、19秒前。リハーサルで確認していたのは、打ち上げの18秒前までのものであり、今回原因と想定されているところがリハーサルで確認できていたかどうかは微妙なところで現在確認中という。実は、姿勢を計算する機体側の計算機が起動するのが打ち上げの20秒前。これが起動され、計算結果が地上に送られた直後にシーケンスが停止された格好だ。リハーサルを打ち上げ18秒前までのものとしていたのは、同15秒前にはノズルを動かすための熱電池に火がつくため。熱電池は一度火をつけると二度と使えなくなる。

 なお、森田氏の会見に先立ち、山本一太内閣府特命担当大臣(宇宙政策)やJAXA 理事長の奥村直樹氏などが記者会見を開いた(図2)。その中で山本大臣は、次のように語った。「予定通りに打ち上げられなかったのは大変残念。ただ、H-IIAロケットやとH-IIBロケットと並び、イプシロンロケットも基幹のロケットとしていくという政府の考えは変わらない。しっかりと原因を究明し一日も早く打ち上げを成功させてほしい。宇宙基本計画では、自立性の確保と宇宙利用の拡大を2つの柱として掲げている。イプシロンロケットはそのためにも重要なもの。これによって宇宙政策が後退することはあってはならない」。