バンダイナムコゲームスが提供する「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」は、PlayStation 3向けの対人型のゲーム。2012年6月に運営を開始し、2013年8月時点で90万ダウンロードを記録して成功したゲームとなっている。基本無償でアイテム課金を通じて売り上げをたてる「F2P(Free to Play)型」を採用した。当初開発時点では、一般的なパッケージ販売を計画していたが、ゲームソフト販売に陰りが見えていた状況で、家庭用ゲーム機としては当時珍しかったF2P型に転換した。

 そこで課題となるのが、課金アイテムの設計だった。2013年8月23日まで横浜市で開催されているゲーム開発者向け会議「CEDEC 2013」のセッションで、同社がゲーム設計のガイドラインを解説した。対人型ゲームの場合、一般にはテクニックに習熟したユーザーほど強くあるべきだ。一方、課金型ゲームの場合、有償アイテムを購入すると強くなるのが一般的。しかし、有償アイテムを集めて課金した人が強くなれてしまうと、対戦で負けたときに納得が得られず、反感を買いかねない。つまり、課金すると強くなりやすいが、課金した人が反感を買わないアイテムであればよい。

 そこで課金アイテムを見直したところ、「時間をお金で買える」要素が含まれていることに気づいたという。「経験値が増える」「レアなアイテムが入手しやすくなる」「ゲーム内のお金が増える」「ゲームを遊べる時間が回復する」などだ。その中で唯一、ゲームを遊べる時間が回復するアイテムだけが、「ゲームを遊べない時間を短縮する」のに対し、他は基本的に「ゲームを遊ぶ時間を短縮する」要素だった。前者は要するにユーザーが「頑張る」ために課金し、後者は「時間を金で買う」ために課金する。前者であれば、対人ゲームでも反感は買わないと考えた。

 そのために導入したのが「出撃エネルギー制」。エネルギーは2時間に1回無料で支給され、1日1時間弱なら無償で遊び続けられ、それ以上プレーしたいユーザーは課金するシステムにした。その他の部分は原則課金不要にし、プレーを重ねると報酬が得られるシステムにしたことにより、売り上げの70%を出撃エネルギーの課金で得られたという。また出撃エネルギーのコンテンツ販売数は2012年におけるトップの成績だった。

出撃エネルギーの売り上げが70%を占める。その中でも高額だが割引率が高いアイテムの売れ行きが良い。長時間プレーするユーザーが多いことを示している。
出撃エネルギーの売り上げが70%を占める。その中でも高額だが割引率が高いアイテムの売れ行きが良い。長時間プレーするユーザーが多いことを示している。
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2012年のPlayStation Storeにおけるダウンロードコンテンツの順位。
2012年のPlayStation Storeにおけるダウンロードコンテンツの順位。
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 経験値が増える課金アイテムなども導入したが、チームが勝利するとメンバー全員に効果が発生するシステムにした。これで課金結果が仲間に感謝されることになり、反感を買わない形にした。ユニット販売も、課金だけでは設計図しか入手できず、それを実際にゲーム中で利用できるアイテムにするにはゲームで成長する必要があるシステムにすることで、反感を買わないようにしたという。

 実際にこうしたシステムを構築して、利用者にインタビューをしたところ、システムに対しては肯定的な回答が得られたという。