米マスターカード日本地区社長のロバート・ルートン氏
米マスターカード日本地区社長のロバート・ルートン氏
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「NFCモバイル・ウォレット・サービス」のデモ。NFC対応のスマートフォン(ここでは韓国サムスン電子「GALAXY S3」のグローバルモデル)を加盟店端末にかざすだけで決済と電子クーポンの処理が同時に実行される
「NFCモバイル・ウォレット・サービス」のデモ。NFC対応のスマートフォン(ここでは韓国サムスン電子「GALAXY S3」のグローバルモデル)を加盟店端末にかざすだけで決済と電子クーポンの処理が同時に実行される
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使用する電子クーポンを選択するところ
使用する電子クーポンを選択するところ
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シンガポールの公共交通機関向け電子マネー「EZ-Link」も利用できる
シンガポールの公共交通機関向け電子マネー「EZ-Link」も利用できる
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 米マスターカード(MasterCard)は2013年8月20日、大日本印刷、米C-SAMと共同で、近距離無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」に対応した「NFCモバイル・ウォレット・サービス」を日本で開始すると発表した。スマートフォンを活用した電子クーポンやポイントサービスを自社ブランドで展開したい日本の流通・サービス業向けに売り込む。

 NFCモバイル・ウォレット・サービスは、マスターカードのNFC決済サービス「Mobile PayPass(ペイパス)」と、C-SAMの電子財布技術を組み合わせたもの。マスターカードによる支払いと、クーポンやポイントに関する処理を同時に行える。利用にはNFC機能を搭載したスマートフォンが必要になる。

 マスターカード日本地区社長のロバート・ルートン氏は、「当社はクレジットカードの会社だと思われがちだが、我々は現金に代わる決済手段を提供するテクノロジー企業だと考えている。NFC搭載スマートフォンが世界中で急速に普及している状況を踏まえて、決済プロセスに付加価値を与えながら、キャッシュレス化を促進したい」と説明した。

 NFCモバイル・ウォレット・サービスは既にシンガポールで導入実績がある。2012年8月から、通信事業者のStarHub、DBS銀行、交通系電子マネー運営のEZ-Linkが共同でモバイルウォレットを展開。1台のスマートフォンでPayPassによる買い物や地下鉄乗車、電子クーポン利用などができる。

 日本では、NFCと技術的に近い関係にある独自規格「おサイフケータイ」が広く普及している。一方、従来型携帯電話からスマートフォンへの移行が進んでおり、国際規格のNFCを搭載したAndroidスマートフォンも急速に普及している。マスターカード陣営はこうした流れに対応し、決済手数料などの獲得を狙う。

2013年内には海外PayPass加盟店でドコモiDが利用可能に

 これとは別に、マスターカードは2012年10月、NTTドコモとの業務提携を発表している。欧米諸国にある非接触決済サービスPayPassの加盟店で、ドコモの「iD(アイディ)」を利用可能にする方針だ。ルートン氏は「端末の開発にやや時間がかかっているが、2013年末までにはサービスを始める」と話した。

 PayPassは世界56カ国の約120万カ所で利用可能だが、日本国内での加盟店は「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」など数カ所にとどまっている。一方のドコモiDは端末台数ベースで50万台以上が普及しているが、日本国外ではほとんど使えない。既にマスターカードの磁気・接触ICクレジットカードが世界中で通用するのに比べて、非接触決済のインフラは発展途上だ。

 マスターカードの上席副社長・広瀬薫氏は、「日本は携帯電話による非接触決済のインフラにおいて、他国にない突出した水準にある。ところが、日本から一歩外に出ると同じ携帯電話・スマートフォンはほとんど決済には使えない。日本国内に限定しても、主要国に比べればまだまだ現金決済の比率が高く、これを置き換える商機は大きい」と説明した。