トレンドマイクロは2013年8月19日、同社がまとめた「2013年上半期のセキュリティ脅威動向」を発表し、報道機関向けに説明会を開催した。同社は「Web改ざんと不正アクセスが急増し、オンライン銀行を狙った攻撃が日本でも台頭している」とし、注意を促した。

 登壇した同社セキュリティエバンジェリストの染谷征良氏は、特筆すべき脅威として「モバイルOSの脆弱性に対する攻撃」「オンライン銀行詐欺ツールを利用した攻撃の本格化」「ミドルウエアの脆弱性を悪用した攻撃の増加」「Web改ざんの急増とアカウントリスト攻撃の台頭」を挙げ、それぞれの脅威を説明した(写真1)。

写真1●トレンドマイクロのセキュリティエバンジェリストである染谷征良氏
写真1●トレンドマイクロのセキュリティエバンジェリストである染谷征良氏
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 モバイルOSをねらった攻撃は年々増加しているが、2013年上半期は特に急増したという。中でも不正アプリは、前年同期比70倍の71万8000個が確認された。6月にはAndroid OSの脆弱性を利用して攻撃する不正アプリ「OBAD(オーバッド)」や、正規のアプリに不正コードのインジェクト(挿入)を可能にする「マスターキー脆弱性」を悪用した攻撃も確認されたという。

 さらに深刻化しているのは、オンライン銀行詐欺ツールを利用した攻撃である。同社の調査によると、日本でオンライン銀行詐欺ツールを利用した攻撃件数が急増しており、2013年上半期の検出数は、前年同期比2.49倍の2万916件だったという。

 急増の背景について染谷氏は、「(アンダーグラウンドで売買されている)ツールキットの価格が暴落している。中にはソースコードが公開されているツールキットもあり、詐欺ツール開発が容易になった」と指摘。すでに海外では深刻となっている同攻撃が、今後日本でも本格化する可能性が高いとの見方を示した。

 ミドルウエアの脆弱性を悪用した攻撃については、「WordPress」や「Joomla!」などのCMS(コンテンツ管理システム)をはじめ、「Parallels Plesk」といったサーバー管理ツールの脆弱性を悪用するケースが目立ったという。その理由について染谷氏は、「OSやアプリの脆弱性対策は進んでいたが、ミドルウエアのセキュリティ対策は遅れていた。ここに着目した犯罪者は、手っ取り早くサーバを乗っ取る手法としてミドルウエアの脆弱性を狙っている」と語った。

 実際、2013年3月にはWebアプリケーションフレームワークである「Apache Struts2」の脆弱性を悪用し、オンラインショップのシステムが改ざんされる事件が発生した。攻撃者は正規ECサイトに送信された入力情報を不正サーバーへ転送し、情報を窃取していたという。

 「オンラインショップの正規ECサイトは、個人情報データベースを持っていない。それにもかかわらずWebサーバー改ざんで個人情報が窃取された。これまでは(情報が格納されている)データベースが攻撃の標的とされてきたが、今後は情報データベースを持たないシステムが攻撃されても、情報窃取が可能となることを理解する必要がある」(染谷氏)