SAPジャパンは2013年8月6日、需給業務計画の策定や調整を支援するクラウドアプリケーション「SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA」を提供開始すると発表した。

写真1●SAPジャパン ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクター 原尚嗣氏
写真1●SAPジャパン ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクター 原尚嗣氏
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 Sales and Operations Planning(S&OP)とは、需要と供給のバランス調整や、財務計画と業務計画の統合、さらには戦略計画と日常業務の実行計画との連携を図るためのプロセスを指す。そのためには、複数の部門が持つデータを統合して分析する必要があるが、「部門間にまたがったデータの統合や分析には手間や時間がかかる。また、グローバル展開する企業が多い中、地域ごとの情報収集や整理も大変で、本質的な分析や仮説に時間が割けないことが多い」と、SAPジャパン ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクターの原尚嗣氏(写真1)は指摘。こうした課題を解決するのがSAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANAだという。

 同アプリケーションは、SAP ERPをはじめとするSAPアプリケーションのデータはもちろん、Excelや他システムのデータも集約して一元管理できるという。同社のクラウド基盤「SAP HANA Cloud Platform」をベースとしており、複数部門のデータをリアルタイムで集約して分析し、必要な時に実データに基づいた需給業務計画の策定や調整ができるとしている。また、シナリオ分析機能を使うことで、複数のシナリオ計画やシミュレーションをリアルタイムで実行できるという。

 ユーザーインタフェースにはExcelやWebインタフェースを採用した。分析レポートなどで表示する項目やレイアウトは、部門や役割に応じてユーザー自身が設定できる。ソーシャルコラボレーション機能も備え、計画の変更履歴も自動で共有される。

 原氏によると、S&OPは既にERP製品の機能として備わっているという。しかし、「ERP製品に備わっている機能は、ERPという閉ざされた環境の中でしか使えず、ERP外のデータを取り込む際や、拠点ごとに異なる仕組みを使っているグローバル環境では不十分だ」として、新たにS&OPをリリースすることになった背景を説明する。

 また原氏は、「販売計画や生産計画などは市場環境や企業の状況によって柔軟な対応が必要なため、クラウドアプリケーションが最適だ。また、基盤がHANAベースとなっているため、リアルタイムなシミュレーション結果が提供できる。さらに、複数部門のデータは結果だけを見てもその経緯が分からないことが多いため、各部門の計画内容を正しく把握できるよう、ソーシャルコラボレーション機能も備えている」と、製品の機能について解説した。

写真2●SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長 馬場渉氏
写真2●SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長 馬場渉氏
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 モデリング済みの需要・供給業務プロセスのテンプレートも用意しており、最短2~3カ月で利用開始できるという。SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長の馬場渉氏(写真2)は、「まずは試しに使ってみてほしい。クラウドで使い始めてみると、本質が見えることもある。その結果、自社固有の実装が必要となれば、クラウドを拡張するか、オンプレミスにするか、スクラッチで新たなシステムを作ることもあるだろう。その意志決定を早めるためにも、まずはクラウドで試してほしい」と話す。

 馬場氏によると、SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANAの価格は「従来のS&OP関連ツールの5分の1から10分の1程度」だという。年内には10社以内の契約を見込み、2014年には数十社に利用してもらいたいとしている。