米Appleのモバイル端末が韓国Samsung Electronicsの特許を侵害したとして米国際貿易委員会(ITC)が一部Apple製品の米国輸入および販売を禁じる判決を下した件で、米通商代表部は現地時間2013年8月3日、この判決を拒否すると発表した。

 AppleとSamsungが繰り広げているモバイル関連の特許係争において、ITCは2013年6月4日、Appleの無線通信デバイスやタブレット端末の一部がSamsungの保持する特許を侵害したと判断し、米国への輸入および米国での販売を禁じる限定的排除命令および停止命令を下した。

 対象となる機種は、米AT&T向けの「iPhone 4」「iPhone 3GS」「Phone 3」「iPad(3G対応版)」「iPad 2(3G対応版)」で、問題の特許(米国特許番号「7,706,348」)はCDMA通信システムにおける信号伝送の仕組みに関するもの。この命令は60日以内に大統領の審査を経て最終決定することになっていた(関連記事:ITC、AppleによるSamsung特許の侵害を認める最終判断、一部製品を差止)。

 Michael Froman通商代表はITCのIrving Williamson委員長に宛てた書簡で、米国経済における競争や消費者などへの影響を審査し、公正で合理的かつ差別のない(FRAND:Fair, Reasonable, and Non-Discriminatory)条件のもとで他社にライセンス供与する標準必須特許に関する米政府の方針を考慮した結果、拒否権の行使を決定したと説明。米政府は、標準必須特許をもとに起こされる特許侵害訴訟が革新と経済の発展を妨げることを懸念していると伝えた。

 なお、今回の拒否権発動はSamsungの補償を求める権利を否定するものではなく、Samsungは引き続き裁判所で特許侵害について争うことができる。

 米メディアの報道(Wall Street JournalNew York Times)によると、大統領がITCの判断を拒否するのは1987年以来26年ぶりとなる。Appleの広報担当者は、「革新を支持する米政権の姿勢を賞賛する。Samsungは特許システムを悪用した」と述べ、一方Samsungの広報担当者は「ITCの判断は、当社が誠意を持って交渉し、Appleがライセンス契約の意思を示さなかったことを正しく認識したものだった」と落胆のコメントを発表している。

[発表資料(PDF文書)]