東京大学駒場キャパスで開催された「東大での『一般情報教育』を体験しよう 2013」
東京大学駒場キャパスで開催された「東大での『一般情報教育』を体験しよう 2013」
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実際に東京大学の授業で用いているスライドを使用
実際に東京大学の授業で用いているスライドを使用
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テキストも実際の授業と同じものを用いた
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 「東大での『一般情報教育』を体験しよう 2013」と題した催しが、2013年7月30日、東京大学駒場キャンパスで開催された。東京大学の新入生全員が受講する情報処理の基礎に関する講義を、高校の教諭が体験するものだ。東京都や神奈川県を中心に、全国から「情報」を担当する高校教諭が70名ほど参加した。教諭からは「意外に、高校で教えている内容との重複が多い」などの感想が漏れた。

 この催しは、情報処理学会のメンバーによる研究グループ「会員の力を社会につなげる」(SSR)や、全国高等学校情報教育研究会、東京都高等学校情報教育研究会(都高情研)、神奈川県高等学校教科研究会 情報部会などが開催した。「高校での情報の授業が、大学でどのように接続されているのかを知り、高校の授業に還元する」(都高情研の副会長を務める、東京都立松が谷高等学校の平野篤士校長)ことを目的とする。

 講義を担当したのは、東京大学大学院情報理工学系研究科の萩谷昌己教授ら。実際に同大学の講義で用いているテキストを利用して、「情報システムの役割」「ユーザーインタフェース」など文系の学生も学ぶ内容から、理系学生を対象とした専門的な内容までをダイジェスト的に解説した。

 特に文系学生向けの内容には、高校で学ぶはずの内容も多く含まれているという。その一つが、基礎的な用語の意味。「“プロトコル”のような初歩的な用語をきちんと理解していない学生が少なくない。こうした用語の定義や意味を知らせることは、授業の中でも重要な項目になっている」(東京大学で「情報」を非常勤講師として担当する、早稲田大学情報教育研究所の辰己丈夫氏)。基礎的な語句への理解不足から、情報分野の学習自体につまずいてしまうこともあるという。「東大の学生でもこの内容が理解できないのか、と意外に感じた面もあった」(東京都立町田高等学校 主幹教諭 小原格氏)。

 これは、高校で教科「情報」がきちんと履修されていないことの現れではないか、と複数の教諭が指摘する。特に東京大学には進学校出身の生徒が多く、「あくまで推測にすぎないが、受験に必要な教科の学習に時間を割き、「情報」を熱心に学ばなかった可能性も考えられる」(筑波大学 東京地区 ビジネスサイエンス系 久野靖教授)という。

 一方で、テーマ自体は高校で学ぶものと同じでも「大学ならではの広い視野で問題を捉えている。さすが大学だと感じた」(小原氏)と、より発展的な内容が扱われている場合も少なくないという。このように「大学ではこんなふうに授業をしているんだ、ということを、高校の教員が知る意義は大きい」(平野氏)。この場で学んだことを、高校での授業に生かしていくという。