写真1●「データサイエンティスト講座」の会場。定員の250人が参加した
写真1●「データサイエンティスト講座」の会場。定員の250人が参加した
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写真2●花王 情報システム部門統括付部長の大路延憲氏
写真2●花王 情報システム部門統括付部長の大路延憲氏
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 2013年7月29日午後、都内で日経情報ストラテジー主催の「データサイエンティスト講座」が開催され、トップデータサイエンティストの講演に250人が熱心に聴き入った。

 「日本のトップが伝授 数字と人を見極め、業績を伸ばす」と題したこのセミナーには、花王、大阪ガス、アイズファクトリー、楽天の各社から、4人の著名データサイエンティストが登場。各社の取り組みを紹介しつつ、利益を出す心得や効果的な時間の使い方、データサイエンティストを目指す人が陥りやすい落とし穴、データサイエンティストの日常業務などについて解説した。

 花王の情報システム部門統括付部長である大路延憲氏は、在庫日数29%減、欠品率65%減とめざましい成果をあげたSCMプロジェクトの例を語りながら、データサイエンティストの心得として3つのMを挙げた。その上で「まず目的(Mindset)と評価尺度(Measurement)を明確にし、それから手法(Method)を決める。決して手法から始めてはいけない」とアドバイスした。

 大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫氏は、自身の10年余りの経験から、「単に分析力があるだけの“バックオフィス型分析者”ではビジネスを変えられない」と断言。「(ビジネス課題を)見つける力、(分析問題を)解く力、(得られた知識を)使わせる力、の全てを備えた“フォワード型分析者”が、ビジネスに価値をもたらすことができる」とした。

 楽天の執行役員で楽天技術研究所長の森正弥氏は、「楽天市場」を舞台とした同社のデータサイエンティストのデータ活用手法を明かした。楽天は、2012年2月の組織再編で「ビッグデータ部」という部署を発足させた。グループコアサービス部、楽天技術研究所も合わせると、400人近くの社員がおり、その中に数10人のデータサイエンティストを抱える。

 「1000万人に1000万通りのアプリ・サービスを現場から」と題した講演で森氏は「(eコマースにおける)日本の小売りの特徴は、顧客も商品も(売れ筋でなくても顧客が来る)ロングテールな傾向が強いこと。売れ筋を作るより、メニューを細分化した方がはるかに効果的」と説明。「今後は、多様なサービスをいかに低コストで提供できるかが、データサイエンティストの役割になるのではないか」と指摘した。

 データサイエンティスト十数人を抱えるアイズファクトリー社長の大場智康氏は、過去の事例を紹介しながら、データサイエンティストができること、できないことを説明した。「ビジネス上の課題を決めるのは顧客自身の役割だが、実際にはデータを見ながら決めていく大変な作業なので、当社がお手伝いすることも多い。定期的に訪問して効果が出そうな仮説とデータを切り出していく」と、顧客との協力体制について話した。

 なお、4人が共通して触れたのが「データサイエンティストの育て方」というテーマ。各社各様の研修メニューや与える課題の内容などを紹介していた。

■変更履歴
当初、本文の第5段落目で楽天の社内部署の人員体制について「400人近くのデータサイエンティストを抱える」としましたが、正しくは「400人近くの社員がおり、その中に数10人のデータサイエンティストを抱える」です。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。[2013/7/31 11:50]