写真●記者会見でTSUBAME2.5について説明する東工大の松岡教授
写真●記者会見でTSUBAME2.5について説明する東工大の松岡教授
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 東京工業大学は、同大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME2.0」を増強し、性能を数倍に向上させた「TSUBAME2.5」を2013年9月に稼働させる。単精度浮動小数点演算を重視したのが特徴で、理論上のピーク性能は現在の4.8ペタフロップスの3.6倍となる17.1ペタフロップスである。単精度演算については、理化学研究所のスパコン「京」を上回り、日本国内で最速という。倍精度演算については、現状の2.4倍の5.76ペタフロップスとなる。

 性能向上は、TSUBAMEの演算ノードであるGPUを全て最新型に置き換えることで実現する。TSUBAME2.0では、米NVIDIAのFermiアーキテクチャの「Tesla M2050」を利用していたが、TSUBAME2.5では同社のKeplerアーキテクチャの「Tesla K20X」に交換する。システム構築は、TSUBAME2.0と同じく、NECと米ヒューレット・パッカードが担当した。

 TSUBAME2.0の運用予定期間はまだ2年以上残っているが、今回、増強を決めたのは、「TSUBAME2.0の利用率が、繁忙期には99%に達しており、計算資源が逼迫している」(同大学 学術国際情報センターの松岡聡教授、写真)ためである。

 なお、世界でのスパコンの演算性能を集計する「TOP500プロジェクト」での評価は、規定上、単精度演算ではなく倍精度演算のみであるため、今回の17ペタフロップスという数値は対象外である。「スパコンでの演算は従来、倍精度が中心だったが、最近は単精度でも問題ないアプリケーションが増えてきた」(松岡教授)という。

TSUBAME3.0の稼働は2015年以降へ

 TSUBAME2.5を今回投入したのは、後継のTSUBAME3.0で想定しているプロセッサの供給が遅れており、3.0の稼働が2015年後半以降と当初より後ろ倒しになったことも背景にある。「他機関のスパコンも急速に性能を向上してきているため、TSUBAMEの増強を2015年まで待つことはできないと考え、2.5の投入を決めた」(松岡教授)という。

 TSUBAME3.0では、ビッグデータの分析用途などに向けて、不揮発性メモリーの活用を検討している。現状のTSUBAME2.0でも、ローカルスクラッチ領域にSSDを活用しており、これを拡充するほか、ReRAM(抵抗変化型メモリー)などを記憶階層に盛り込むことも検討しているという。