写真●「ビームス 原宿」の店舗
写真●「ビームス 原宿」の店舗
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 セレクトショップ大手のビームスは2013年7月中に、新しい顧客分析システムを使って各店舗ごとに作成する自社カード会員の購買行動に関するレポートの配布を始める。130店以上ある店舗一つひとつに対し、クラブ会員カード「BEAMS CLUB」を持つ顧客の消費動向を毎月調べ、店舗間の買い回りの様子や来店頻度と購買金額の関係、優良顧客に人気の商品などを伝え、接客や品ぞろえに生かしていく。

 これに先立ち、ビームスは2013年2月に自社の通販サイト「BEAMS Online Shop」と実店舗のポイントを共通化。データを統合して、ネットと実店舗の買い回りを強化した。翌3月には社内に「CRM推進部」を新設。6月には「戦略会議シリーズ 顧客分析システム」を販売するリゾームの仕組みを新規導入し、265万人いるクラブ会員の購買行動を分析しやすくした。

 ビームスの山崎勇一販売本部CRM推進部課長によれば、「これまで日本NCRのデータベースを使って顧客情報を蓄積してきたが、生かし切れていなかったのが実情だった」。そこでリゾームの顧客分析システムを別途用意し、まずは本部にいる60人の社員が簡単に会員の購買行動を調べられる環境を整えた。以前のシステム環境では、店舗ごとに会員レポートを作成するとなると、相当の時間と労力を要したという。

 新システムの稼働後は山崎課長がいるCRM推進部が中心になって各店の会員動向を調べ、毎月「ありがとうレポート」にまとめて店舗ごとにカスタマイズして必要な情報を現場に配布していくことにしている。

 ネット通販も店舗の1つと捉えているが、「実店舗の立地によって、その店舗に来る会員のネットとの併用率が大きく違ってきていることが見えてきた。同じ東京の店舗でも会員のネット併用率は異なる。また、実店舗だけの利用者よりもネットを併用する人の方が購買金額が数倍大きいなど、実店舗のスタッフには会員動向を逐一知らせて、接客や品ぞろえに役立ててもらう」。

 ビームスが今、特に気にかけているのが会員のネットと実店舗の買い回り状況だ。

 CRM(顧客関係管理)を強化するには、早い年代から潜在顧客と接触するのが重要になってくるが、「今の20代のエントリー層は当社とのファーストコンタクトが(実店舗ではなく)ネット店舗である比率が非常に高くなっている」。ネットで頻繁に買い物する若者の中には「ビームスって実店舗もあって便利だよね」と言う人までいるのが現実だという。「ネットが先で実店舗が後」という昔との逆転現象は、もはや珍しくはない。むしろ主流になりつつある。

 それだけにビームスは「ネットと実店舗の買い回り分析が今後は非常に重要になる」と見ている。ありがとうレポートは、そうした会員の購買行動の変化を店長などに認識してもらうための仕組みになる。