日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2013年7月10日、第268回委員会を開催し、日本版IFRS(国際会計基準)、J-IFRSなどと呼ばれる「エンドースメントされたIFRS」に関する作業計画案を提示した。今秋にも作業部会を設立し、1年をかけてIFRSの各基準について採択可能かを審議していくというロードマップを示した。

 エンドースメントされたIFRSは、金融庁が6月19日に公表した報告書「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」でIFRS任意適用促進策の一つとして示したもの(関連記事:「強制適用の判断見送り、我が国に適したIFRS策定」、金融庁が報告書)。現行の任意適用は、IFRSを改変しない「ピュアIFRS」が対象。このピュアIFRSに、「(IFRSの)個別基準を一つひとつ検討し、必要があれば一部基準を削除または修正して採択する」エンドースメントのプロセスを経たIFRSを任意適用の対象に加えることで、日本企業がIFRSを採用しやすくする狙いがある。

必要に応じて各基準を削除・修正して採択

 ASBJが示した作業計画案「IFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要(案)」は、この報告書に基づくもの。概要は以下の通り。

 エンドースメントされたIFRSは日本の会計基準(日本基準)と同様、ASBJの議決により定める。実際の作業は、日本基準における専門委員会に相当する「IFRSのエンドースメントに関する作業部会(仮)」で進める。メンバーはIFRSや日本基準に精通した作成者、利用者、監査人、学識経験者で構成する。

 検討対象は、IFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)が定めた会計基準類(IFRS、IAS、IFRIC、SIC)。概念フレームワークまで対象にするかどうかは、「他国のエンドースメントの取り扱いを分析して検討する」という案を示している。

 エンドースメントの作業は、検討対象となる個々の基準について、金融庁の報告書が示す判断基準に基づいて「修正することなしに採択可能か否かを検討し、必要に応じて削除または修正して採択する」ことで進める。そのために、「IFRSと日本基準の差異を分析することにより、検討が必要な項目を抽出する」としている。

 スケジュールとしては、IASBが2012年12月31日までに公表した会計基準については、「個別基準に関する検討開始から概ね1年」とする。ASBJは「来年秋まで」と語った。2012年12月31日以降に公表した会計基準については、基準ごとに、公表から1年をめどに採択を判断していく。

 エンドースメントされたIFRSは「我が国における会計基準等となる」ため、日本語により作成する。「会計基準等の修正とならない範囲でガイダンスを作成することも考えられる」とする。