「今後10年間で、人、プロセス、データ、モノなどすべてがインターネットにつながり、インテリジェンスに連携していく、Internet of Everythingの時代が到来する。Internet of Everythingは全世界に14.4兆ドルの価値を生む。日本はそのうちの少なくとも5%を占め、今後10年間で国内に76.1兆円の新市場が生まれる」――。2013年7月5日、日経BP社が都内で開催中のイベント「IT Japan 2013」に登壇したシスコシステムズの平井康文代表執行役員社長(写真1)は、今後10年間でインターネットを取り巻く環境が大きく変わることを強調。このようなビジネスチャンスを日本がリードするよう来場者に呼びかけた。

「若い世代にとってスマホは207本目の骨」

写真1●シスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏(撮影:井上裕康)
写真1●シスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏(撮影:井上裕康)
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 シスコが提唱するInternet of Everything(IoE)とは、あらゆるモノがインターネットにつながる「Internet of Things(IoT)」をさらに拡張した考え方だ。機器やモノがインターネットにつながるだけでなく、人と人がつながる手段の拡大や、必要な情報を必要なタイミングで人やモノに提供するプロセス、意思決定を加速するためのデータの活用など、ビッグデータ的な要素も含む概念となる。

 現時点で世界の99%のモノはまだインターネットにつながっていないが、シスコの予測によると2020年には25億の人と、370億個のモノがインターネットにつながるようになるという。平井社長は「すべてのものがデジタル化すると、全く新しい経営や生活スタイル、人生設計ができるようになるのではないか」と話す。

 このような変化をイメージするために、平井社長はシスコが最近実施した調査結果をいくつか紹介した。

 まずは2012年秋に世界主要18カ国の18歳から30歳、ジェネレーションYとも呼ばれる世代を対象に実施した調査結果だ。この世代では朝起きて、着替えたり、朝食を食べたりする前にまずスマホをチェックする人がほぼ100%、日本に限っても91%の割合になっているという。「この世代では朝の儀式としてスマホをチェックする。人間には206本の骨があるが、スマホは207本目の骨になっている」(同)とした。

 平井社長は、この世代はFace to Faceで会うよりもネットでつながる時間のほうが長いのも特徴と話す。3人に2人がネットでつながる時間のほうが長く、特に女性では81%の人がその傾向にあるという。平井社長は「そういえば自分にも見覚えがある」と自身の経験も紹介した。平井社長の出身高校の同窓会は10年前から毎年開催され、例年60人から70人ほどの参加があったが、2年前に同窓会のFacebookページを作ったところ、昨年は20人しか集まらず、今年に至っては開催が中止されてしまったという。「常にFacebookページを経由して皆々がつながっているので、最近どうしている?という同窓会の必要が無くなってしまった」(同)からだ。

 人と人のコミュニケーションの変化に加えて、今後ネットワーク面ではさらに劇的な変化が訪れるという。

 平井社長はシスコが実施している全世界のIPトラフィックの予測調査「Cisco Visual Networking Index(VNI)」のデータを紹介し、2012年から2017年に全世界のIPトラフィックは3倍に増加する予測を示した(関連記事1)。モバイルトラフィックに至っては、今後5年間で13倍にも膨れ上がるという(関連記事2)。