写真●講演する早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏(撮影:井上裕康)
写真●講演する早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏(撮影:井上裕康)
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 「あまり日本の国に期待しない方がいい。海外に出向いて、企業の方と会ったり、現場を見たりしていると、今までの日本の勝ちパターンは通用しないと感じている。まずは個人と企業を強くしていかないといけない」。2013年7月5日、日経BP社が主催するITエグゼクティブ・フォーラム「IT Japan 2013」で、早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏はこう強調した(写真)。

 まず内田氏は1年半ほど前に訪れた中国での経験に触れた。内田氏が上海にあるメーカーの経営者と話をしたところ、経営課題として「空洞化」を挙げたという。これは付加価値の高い製品は上海で作る一方、付加価値の低いものは東南アジアに移管する動きを指す。内田氏は「従来の延長線上に日本の成長はないと感じた」と話す。

 内田氏は日本企業が新たな勝ちパターンを模索するうえで参考になるとして、米大リーグのオークランド・アスレチックスをあげた。映画「マネーボール」で一躍脚光を浴びたゼネラルマネジャー(GM)のビリー・ビーン氏がチームの得点を統計的に分析する手法を採り入れ、出塁率の重要性を導き出したことを紹介。ア・リーグの西地区で優勝争いができるようになった原動力とした。

 「アスレチックスのやり方は人気球団であるヤンキースにはできない。企業も同じで、お金や経営資源がないところが、リーダーと同じやり方では勝てない。一番申し上げたいのは、各社が個性を持った戦い方をしないといけないことだ」(内田氏)。

成長企業の半分以上は成熟業界から

 内田氏は講演のなかで、ボストンコンサルティンググループ時代に米国で実施した調査も紹介した。そこで業種別に成長企業を調べたところ、成長企業の半分以上が成熟業界から生まれていることが分かったという。

 そのうえで内田氏は「成熟業界ではある意味、思考停止が起きている。もしイノベーションを起こせれば、面白いように成長できる」と指摘。国内では中古車買い取り大手のガリバーインターナショナルを例に挙げた。

 それまでの中古車業界は売ることに主眼を置くビジネスだったが、ガリバーはそこに「買うだけで勝負する」という購買パワーの発想を持ち込んだ。買った商品を一定期間内にオークションで売りさばき、在庫リスクを抑える。「ガリバーは従来の中古車業界とは180度違うやり方で成長した。今までと違うやり方をしたところが成長する」(内田氏)。

 最後に内田氏は「(競合他社とは)違うビジネスモデルで戦わないと、日本に未来はない」とし、「日本は駄目になっても、俺は生き残るぞという気概を持つべき」と語り、講演を締めくくった。