「風通しが良く、部門の垣根を越えた横連携ができること。これが新しい価値を生み出せる企業組織の条件だ」。日本マイクロソフトの樋口泰行社長はこう強調する(写真)。樋口社長は日経BP社が2013年7月3日から5日にかけて東京都内で開催中のイベント「IT Japan 2013」で登壇し講演。これまで社長を務めた日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、産業再生機構の支援下にあったダイエー、そして日本のマイクロソフトにおける経験を基に、新しい価値を創造できる組織とITについて語った。

写真●日本マイクロソフトの樋口泰行社長(撮影:井上裕康)
写真●日本マイクロソフトの樋口泰行社長(撮影:井上裕康)
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 樋口氏が特に強調したのは、風土改革の重要性である。「社内の風通しを良くして、お客様のため、あるいは商品価値向上のために、言いたいことを言い合える風土に変えることがとても大切だ」と述べた。

 講演中、2005年にダイエーの社長に着任したときのことをこう振り返った。スーパーの顔とも言える野菜売り場の改善のために、期待できそうなメンバーを選び、部門横断的なタスクフォース(専任チーム)を立ち上げた。しかし最初のうちは、野菜が売れない理由を他の部門のせいにする、あるいは社歴や経験を重視して若い人の意見を押さえ込む、といった傾向がみられたという。

 そうした雰囲気を変えるべく、チームメンバーとコミュニケーションを取り、売り場の現状について危機感を共有しつつ、建設的な意見が出せるように誘導した。次第にそこから生まれた改善策が店舗で実行に移されるようになり、売り場が改善された。「以前は来店したお客様が野菜の鮮度を確かめながら買い物かごに入れていた。ある時点から、手に取った野菜をそのまま買い物かごに入れる姿が見られるようになった」(樋口社長)。