写真●アクセンチュアの程近智社長(撮影:井上裕康)
写真●アクセンチュアの程近智社長(撮影:井上裕康)
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 「これからは全てのビジネスがデジタルになる(Every Business Is a Digital Business)。デジタルに置き換わることを前提に、仕事のやり方を再構成する必要がある」--アクセンチュア社長の程近智氏は、2013年7月4日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2013」(会期:2013年7月3日~5日)で講演し、デジタル化の波が隅々まで到達しようとしている時代に、企業がとるべき戦略に関してのアクセンチュアの考えを述べた。

 程氏は冒頭で、「増え続けるデータ、増え続ける通信……これに企業はついてきているのだろうか」と問題を提起。以下の7つの視点から、企業をどう進化させていくか考える必要があると主張し、順を追って詳細に説明した。

経営面から近い将来の戦略に関する四つの視点を提示

 最初の四つは経営に関する視点。(1)Relationships at Scale~トランザクションからインタラクションへ。十人十色の顧客関係を築くという意味で、顧客に対してワン・ツー・ワンマーケティングを行うことを指す。「ネット時代になり、口コミの影響がますます強くなっている。例えば米国のある調査では、口コミを信じるとの回答が92%に達した」(程氏)。

 ただし、これを実現するには、企業内部を変革し部門間の壁を崩さなければならない、と強調した。「部門間の壁のせいで、部門間どうしで情報提供ができない。例えば、企業内で名寄せができないので、得意客に対して全社を挙げて良質のサービスを提供する、といったことが実現できない」と指摘した。また、イタリアの通信系企業が、店舗にセンサーやカメラを設置して、顧客どのような行動を取るか情報を収集。分析した結果を成果につなげている事例を紹介した。
 
 二つ目は(2)Design for Analytics~デザインされた分析。これは、これまでは効率アップや処理スピード向上のみに利用してきた情報システムを、意思決定にも利用しようというもの。程氏は「データの量は十分にある。本当に欲しいのはインサイト、つまり示唆だ。ビッグデータよりベターデータで、これをどう利用するか」と強調した。
 
 続けて、「単純にITにビッグデータをつなぐだけでは、インサイトにはたどり着かない。システムを、意思決定してアクションを起こすためのツールにするには、経営の問いを出発点としてデータSCMをデザインすべき」と主張した。事例としては、米コカコーラが、気象やオレンジの予想収穫量を数式化したモデルを基に生産計画を作成し、オレンジ果汁飲料を安定的に供給しているケースを紹介した。

 三つ目は(3)Data Velocity~データのスピード。「30年前は月次処理が主流だったのが、週次処理が当たり前になり、現在は『今でしょ?』という時代。速度自体が競争力の時代なのに、業務意思決定が同じスピードでついていっているか」と程氏は問題提起する。最近は経営者からも「システム構築に半年や1年かかっていてはダメ。2カ月か3カ月でできるシステムを作って欲しい」と言われるようになったという。

 四つ目は(4)Seamless Collaboration~コラボレーションをビジネスプロセスに組み込む。ソーシャルツールを企業システムに取り込み、コミュニティ形成機能や外部への情報発信機能などをうまく活用することを指す。「これまでの階層や組織の壁で閉じていた情報共有を、トップと現場が直結した仕組みに変えるためには、ソーシャルの仕組みは非常に役に立つ」と程氏は言い、続いてアクセンチュアのあるグループ内で実行した、企業ソーシャルの導入でグローバル単位での迅速な情報共有や協力体制の確立に成功した事例を紹介した。