写真●日本IBMで常務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業インダストリアル・サービス事業担当を務める鴨居達哉氏(写真:井上裕康)
写真●日本IBMで常務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業インダストリアル・サービス事業担当を務める鴨居達哉氏(写真:井上裕康)
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 「顧客個人の理解や、マルチチャネルでの顧客対応の一貫性など、ビッグデータの活用によって企業のマーケティングに求められる要件が高まっている」---。日本IBMの常務執行役員でインダストリアル・サービス事業担当を務める鴨居達哉氏(写真)は2013年7月3日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2013」で講演し、IT技術がマーケティングに及ぼす影響について説いた。

 冒頭で鴨居氏は、ユーザー企業に聞く「経営に影響を与える外的要因」の調査結果が以前と比べて変わったことを紹介。調査を開始してから初めて、「テクノロジ」がナンバーワンになったという。多くのユーザー企業が、ビッグデータ分析などのIT技術が経営に影響を与えることを確信しているという。

 こうした、経営に影響を与えるIT技術は、これまでのITとは毛色が異なる。これまでのITは主に、バックオフィスでコストを削減したり、生産性を向上したりすることに使われてきた。一方、これからは、フロントエンド業務において、これまで業務の上ではITに触れることがなかった新しいユーザーが、ITを活用するようになるという。こうしたIT活用の代表格がビッグデータであると鴨居氏は言う。

 ただし、ビッグデータ時代は始まったばかりであり、どう活用すればよいのか分かっていない企業が多いのが現状だ。そこで日本IBMは、ビッグデータの活用も支援するという。例えば、同社が「Cognitive(知覚・認識)コンピューティング」と呼ぶ情報システムでは、ビッグデータから役に立つ事象の予測や発見が可能になっている。

顧客の洞察がビッグデータ分析のトップ

 ビッグデータにおける最大の投資分野は、顧客に関する洞察(顧客理解)であると鴨居氏は言う。グローバルでは73%、日本では77%のユーザーが顧客理解をビッグデータの活用対象として挙げている。こうした中でも、顧客理解をマーケティングに活用する動きが、ここ2年で急速に立ち上がっているという。

 事実、マーケティングへの投資額は巨大である。鴨居氏が挙げたデータによれば、2011年にグローバルでマーケティング領域で消費された金額は140兆円、2012年にCMO(最高マーケティング責任者)が関与したIT投資額は13.8兆円であり、今後3年間でマーケティングにかける費用は60%増加するとしている。

 ビッグデータによってマーケティングの在り方も変わる。これまでのマーケティングの役割は、(1)顧客を知る、(2)何をどうやって市場に出すのかを決める、(3)ブランドと信用を作る---の三つだった。これが変わるという。

 今後のマーケティングに求められる三つの要件を鴨居氏は、(1)個のレベルで顧客を理解する、(2)すべての接点で、顧客に応じた体験を一貫性を保持して提供する、(3)企業文化とブランドを真に一致させる---と説明する。