写真1●バリュー・ネットワーキング構想を語るヤマトホールディングスの木川眞社長。左はヤマト運輸の山内雅喜社長、右はヤマトロジスティクスの金森均社長
写真1●バリュー・ネットワーキング構想を語るヤマトホールディングスの木川眞社長。左はヤマト運輸の山内雅喜社長、右はヤマトロジスティクスの金森均社長
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写真2●9月の稼働を目指して建設が進む羽田クロノゲート。敷地面積は約10万平方メートル
写真2●9月の稼働を目指して建設が進む羽田クロノゲート。敷地面積は約10万平方メートル
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 ヤマトホールディングスは、物流改革を通じて日本の成長戦略に貢献する「バリュー・ネットワーキング構想」を発表した(写真1)。2013年8月に稼働させる「厚木ゲートウェイ」、9月下旬に稼働させる「羽田クロノゲート」(写真2)、2012年に稼働した「沖縄国際物流ハブ」などのスーパーハブを中核に、B2B(企業間)やB2C(企業対個人)の物流事業を強化。アジアへの生鮮食品の輸出増加や、物流の効率化による製造業のコスト競争力強化を支援する。

 羽田クロノゲートには1400億円、厚木をはじめとする3カ所のゲートウエイにはそれぞれ200億円を投資する予定。沖縄国際物流ハブやアジア各国のネットワーク構築も加えると、投資総額は2000億円以上に上る。ヤマトホールディングスの木川眞社長は「1929年の路線便事業、1976年の宅急便に続く、ヤマト三度目のイノベーション。事業構造改革と、それを支える事業基盤の進化を通じて、安倍総理が進める日本の成長戦略をインフラとして支える」とした。

 キーワードは「止めない物流」。従来の宅急便事業では、ベース(主管支店)に集荷した荷物を夕方までプールし、夜間に発送作業を行っていた。幹線輸送も1日1回。これに対して、羽田空港に隣接し、陸海空の輸送手段を活用できる羽田クロノゲートや、関東圏の物流の入り口となる厚木ゲートウェイは、いずれも24時間稼働。荷物の到着と同時に仕分けして、ヤマト運輸の各地のベースに即時に送り出す設備を備える。これによって多頻度の幹線輸送を可能にし、スループットを速める。

農産物と魚介類をまとめて翌日には香港の飲食店に

 スーパーハブでは、各種の付加価値機能を提供する。例えば羽田クロノゲートでは、異なる荷主から集荷した荷物を発送先別に集約して同梱する「クロスマージ」と呼ばれる機能を提供。メーカーが海外の複数サプライヤーから部品を調達して、国内の複数工場に発送するにあたり、この機能を使うことで自社物流拠点での作業を大幅に軽減できる。

 また生鮮食品の輸出でも「農家が出荷した野菜と、漁港から届いた蟹を詰め合わせ、クール宅急便で翌日に香港の飲食店に届ける」といった運用が可能になる。通関や、日本語ラベルの貼り付けなどのローカライズ作業も請け負う。荷物を「動かし」ながら、顧客が求める形に変えていけるわけだ。

 海外から調達した部品や製品を組み立てたり、故障した商品を修理してスピーディーに返送したりする機能も備える。医療機器の清浄やメンテナンスなど、特定業種に特化したサービスも提供する。

 厚木ゲートウェイもクロスマージや組み立て機能を提供する。例えば小売店向けに商品を販売するメーカーがクロスマージ機能を利用すれば、各小売店向けに商品を仕分けする作業を行わなくて済む。小売店にとっても、納品が集約されて受け取り作業を短時間で完了できるメリットがある。

 厚木ゲートウェイに続き、名古屋、大阪にもゲートウエイを設立する予定。既に愛知県豊田市には土地を取得しており、「短期間で3拠点を設立し、現在一部地域で行っている当日配送の範囲を広げる」(木川社長)。

グループ各社のサービスをワンストップで提供

 実はスーパーハブで実現する付加価値事業には、ヤマトロジスティクスをはじめとするグループ企業で既に手掛けていたものも多い。スーパーハブ内に機能を集約することで、ワンストップで様々なサービスを提供できるグループの強みを前面に押し出す。

 付加価値事業を実現するうえでは、顧客企業が持つ出荷や納品予定、部品表などのデータをヤマトと共有する必要がある。ヤマトでは2012年に「一貫トレースシステム」の構想に着手。ヤマト側で包含的なコード体系を作り、顧客企業が自社の製品や部品をひも付けしてヤマトのデータベースに登録する仕組みを2014年中に構築する予定だ。こうした仕組みを通じて、中小企業が低コストで利用できる環境を整えるもようだ。

■変更履歴
当初、写真2のキャプションで羽田クロノゲートの敷地面積を約100万平方メートルとしていましたが,正しくは約10万平方メートルです。お詫びして訂正します。キャプションは修正済みです。[2013/07/04 13:35]