写真●NECで取締役執行役員常務兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める清水隆明氏(写真:井上裕康)
写真●NECで取締役執行役員常務兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める清水隆明氏(写真:井上裕康)
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 「2050年に向けて地球の人口は今から1.3倍になる予測がある。世界の経済規模が4倍になるなかで、安心安全な暮らしや効率的な資源配分を実現するインフラが重要になってくる」。

 日経BP社が2013年7月3日から5日にかけて東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2013」に、NECで取締役執行役員常務兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める清水隆明氏が登壇(写真)。「ICTが実現する社会価値創造」と題し、地球の将来を見据えた社会ソリューションについて講演した。

 2050年に人口が1.3倍になると、「都市に住む人口の割合は現在の50%から70%と人口集中が進み、消費するエネルギーは1.8倍、食料は1.7倍、水は1.6倍になるという予測がある」(清水常務)。NECではこうした問題を念頭に置き、「社会ソリューション事業に注力している」と清水常務は話す。社会ソリューション事業は「安心」「安全」「効率」「公平」の四つの価値を社会に提供する事業との位置づけだ。

 社会ソリューション事業強化の一環として、NECは2013年4月に「グローバルセーフティ事業部」を設置。拠点をシンガポールに置いた。日本にあえて拠点を置かなかった理由について清水常務は、「今後、安心安全に対する需要が高まる新興国の中心地に拠点を置いた。日本から技術の情報などを提供しサービスを展開していく」と説明した。

宇宙と海底から地球を見守る

 グローバルセーフティ事業部では安心安全に向けた社会ソリューションとして、(1)市民サービス/入国管理、(2)法の執行・警察、(3)重要インフラ監視、(4)行政サービス、(5)情報管理、(6)危機・災害管理、(7)組織間の連携、の主に七つの領域でサービスを提供する計画だ。いずれの領域についても「NECが以前から取り組んでいる生体認証の技術やセンサー技術などが活用できる」と清水常務は説明する。

 (1)の場合、40年以上前から警察向けに提供してきた指紋認証システムの技術など「生体認証を生かした事例が既に世界各国である」と清水常務は話す。その一例がシンガポール空港のeパスポートシステムや、南アフリカの住民管理システムだ。国内でも生体認証の活用事例はある。清水常務はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの年間スタジオ・パスにNECの顔認証システムが採用されている例を挙げ、「生体認証を利用することで、なりすまし防止という目的とともにエンターテイメント化も実現できている」と説明した。

 (6)の危機・災害管理の例では、「宇宙と海底の両方から地球を見守るシステムを既に提供している」と説明。NECが「はやぶさ」や「みちびき」といった人工衛星で使われている観測・通信・測位サービスを担っていることや、緊急地震速報で利用されている海底地震観測システムの海底センサーを提供している例を紹介。「個人や施設といったレベルから、都市、国、地球、そしてサイバー空間まで様々なソリューションを提供していく」(清水常務)とした。

 (7)の組織間の連携では、2012年12月に世界各国の警察組織の連合体であるインターポール(国際刑事警察機構)と提携した。清水常務は、「インターポールとの提携に加えて、シンガポールに拠点もある。情報セキュリティの問題もグローバル化するなかで、NECとして対応できる体制を整えている」とした。