セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は2013年7月3日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2013」において、「日本におけるトラスト革命~新しいカタチで顧客とつながる~」というテーマで講演した。

 最近では企業が質の悪い製品やサービスを提供すると、顧客が別の企業の製品・サービスにすぐ乗り換えてしまうとともに、悪い評判が世界中に広がるようになっている。企業が具体的な技術をベースに顧客との関係を強化して、信頼されるようになることが重要になっているという。

顧客との接点に利用するシステムにはクラウドが適する

写真●セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 兼 米セールスフォース・ドットコム EVP(上級副社長)の宇陀栄次氏(写真:井上裕康)
写真●セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 兼 米セールスフォース・ドットコム EVP(上級副社長)の宇陀栄次氏(写真:井上裕康)
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 宇陀社長はまず、企業が顧客との接点に利用する情報システムの場合、環境が急激に変化することがあるため、短期間かつ俊敏に対応できるクラウドが適していると述べ、中小企業庁の関連事業において、セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスが選択された例などを挙げた。同サービスではクラウドの特徴を生かし、短期間でポータルサイトを立ち上げ、規模を拡張する。3年以内に企業100万社と専門家1万人に参加してもらい、企業間の連携および国と自治体からの情報提供を推進するという。

 バラク・オバマ米大統領の再選キャンペーンでもセールスフォース・ドットコムのクラウドサービスが活用されたという。このキャンペーンでは大量の問い合わせを登録・処理するため、7カ月で大企業並みのシステムを構築した。特徴はシステム担当者も「何をやらないといけないのか分からなかった」という状態だったことである。このように要件が完全に決まっていない状態で、システムを開発する際にクラウドは効果を発揮する。

 多くのシステムには最小限、これだけは実現したい機能がある。具体的には「見える化」のようなシンプルなことからスタートすることが多い。その機能をクラウド上に実装して、システムを稼働させると、「この機能が足りない」「あの機能が足りない」ということが分かってくる。クラウドによってシステムの開発スピードも大きく改善する。必要な機能が分かっても実装に時間がかかっては意味がない。クラウドを利用すれば実装時間の問題も解決できる。

具体的な技術を使って顧客との関係を強化する

 これらを解説したあと、宇陀社長は「カスタマー革命」について話を進めた。「カスタマー革命」は「お客様志向」という意味で、日本企業がもともと力を入れてきた領域である。ただし、日本企業がこれまで進めてきた「お客様志向」は精神的もので、これからは具体的な技術を使って顧客との関係を強化することが求められているという。

 例として国産車ディーラーでいち早くセールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを導入したトヨタカローラ徳島の事例について説明した。自動車販売業界では以前は新車販売が収益源だったが、最近はメンテナンスが重要になるなど状況が変化しており、ユーザー一人ひとりに密着する仕組みが求められている。トヨタカローラ徳島では、クラウドサービスによってそれを実現しているという。