写真●IVSサマーワークショップ2013の「社会起業家」セッション
写真●IVSサマーワークショップ2013の「社会起業家」セッション
[画像のクリックで拡大表示]

 2013年6月28日と29日の両日、起業をテーマとした学生向けイベントIVS(Infinity Ventures Summit)サマーワークショップ2013が慶応義塾大学の日吉キャンパスで開催された(関連記事)。同イベントには、たくさんの起業家や投資家らが講師やパネリストとして登壇、起業の魅力や事業運営のノウハウだけでなく、起業家としての心構えや生き方も学生に伝える場になっている。

 2日目には、「社会起業」をテーマとしたセッションが催された(写真)。登壇者は、オーマ取締役の米良はるか氏、リディラバ代表理事の安部敏樹氏、グランマ代表取締役の本村拓人氏、Coffret Project代表理事とLalitpur代表取締役である向田麻衣氏の4氏である。社会起業とは、社会の課題を、何らかの事業を始めることによって解決することを指す。このところ注目を集めている起業スタイルであり、それに該当する起業家が登壇した形だ。

 セッションでは、それぞれの事業を始めた動機付けや資金の調達方法、日本と海外における周囲の理解の違いなどが紹介されたほか、パネリスト同士がお互いに抱えている疑問や課題を問いかけるなど、起業家自身の事業に対する想いを詳らかにする内容だった。例えば、安部氏が「ユーザーの期待が大きいと、事業の撤退の判断が難しい」とすると、米良氏が「ツールとしての事業は変わるかもしれないが、自分がやりたいミッションは変わらない」と応じるといったやりとりだ。

 終盤の質疑応答で会場の大学生からは「社会起業」の本質を問う質問が寄せられた。「多くの企業は、製品やサービスを通じて何らかの課題を解決したり足りないものを補っているので、社会起業と一般的な企業とは明確に区別できないのではないか」というものだ。この学生は、過去に出会った社会起業家と言われる人に違和感を覚えることがあったと言い、正直にその思いを口にした。

 今回の登壇者に限ってみると、起業家本人が“社会起業”を特別に意識していることはないようだ。「女性起業家と呼ばれることもある。周囲の期待があるなら、好きな形で呼んでもらえればいいし、そのキーワードで関心を持ってもらえるならいい」(米良氏)。安部氏も「堀江貴文氏が指摘しているように社会起業はブームだと思うが、注目が集まることはいいことだ」と積極的にとらえたうえで「社会起業であれ何であれ、価値のあるものが残るということだけなので、社会起業を一括りにした“ラベル”で良し悪しを語るべきではない」とした。

 締めくくりとして各氏は、「社会起業だからといって、必ずしも小さな事業や特殊なことではない。若いうちから社会に興味を持って、課題解決をしてもらえたらうれしい」(安部氏)、「学生には時間があるので、やったこともない、“極端なもの”に取り組んでみるのがいい」(本村氏)「自分に向き合って、やりたいことや大事にしたいことがあったらそれを温めてほしい」(向田氏)「思いがないと長続きしない。起業家でも企業内起業の方も、各自の思いを大事にして早いスピードで実行し続けてほしい」(米良氏)などといった助言を送った。