写真1●総務省政策統括官(情報通信担当)の阪本泰男氏(写真:陶山 勉)
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写真2●東京大学大学院情報学環教授・オープンデータ流通推進コンソーシアム顧問の坂村健氏(写真:陶山 勉)
写真2●東京大学大学院情報学環教授・オープンデータ流通推進コンソーシアム顧問の坂村健氏(写真:陶山 勉)
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写真3●都内街頭に設置したucodeを埋め込んだチップ
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写真4●総務省官房審議官(情報流通行政局担当)の谷脇康彦氏(写真:陶山 勉)
写真4●総務省官房審議官(情報流通行政局担当)の谷脇康彦氏(写真:陶山 勉)
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 2013年6月27日、東京都内で「オープンデータ・イノベーション・カンファレンス」(主催:総務省、日経BPビッグデータ・プロジェクト、後援:オープンデータ流通推進コンソーシアム、ITpro)が開催された。国、地方自治体などが保有する公共データを、二次利用しやすい形で公開・提供する「オープンデータ」を、ビジネスなどに活用してもらうことを目的に、最新動向や実証実験の成果などを発表するイベントである。

 まず、総務省政策統括官(情報通信担当)の阪本泰男氏が主催者挨拶に登壇(写真1)。日本でのオープンデータの取り組みについて「残念ながら欧米に比べて遅れている。キャッチアップ段階から早く脱却して、共通APIを確立しなければならない」と主張した。またオープンデータ活用の効果について「強調したいのは、イノベーションと経済成長を狙えること。たとえばEUでは、14兆円の経済効果があると試算している。データカタログサイトの立ち上げなどを、速やかに実施したい」と説明した。

 続いて、基調講演者として、東京大学大学院情報学環教授・オープンデータ流通推進コンソーシアム顧問の坂村健氏が、オープンデータの可能性について言及した(写真2)。

 坂村氏はまず「1000回やって3回成功するのがイノベーション。あらかじめ何をするか分かるようなものはそもそもイノベーションではないので、ターゲティング型政策は効果がない」と分析。「現在の日本には新しいインフラが必要だが、新インフラ創造は民間だけでは無理。たとえば、米国防省がインターネットを育てたように、政府の力が必要だ。オープンデータによる民間活性化の戦略を立てる必要がある」と主張した。

 続いて、オープンデータ化について「データとAPI(Application Programming Interface)を再利用できる形で公開し、オープンに様々な用途に活用してもらうところからイノベーションが生まれる。応用システムやアプリケーションは、利用する側が多様なものを作るのが前提となる」と説明した。

 その一例として、坂村氏が国土交通省や東京都と共同で実施している「東京ユビキタス計画」を紹介した(写真3)。これは都内街頭にucode(国際標準規格の識別用番号)を埋め込んだチップを設置し、そこからNFCでスマートフォンなどに情報を提供する試み。ucodeは汎用的にモノや場所をネット内で一意に指定できる論理的なIDなので、チップを設置してある当該地点やアクセス時点の状況に適した情報を提供できる。具体的には、観光情報やトイレの位置などだが、非常時には避難情報を提供する。
 
 坂村氏は「街中にユビキタスタグを貼り付けるなどの試みは、どの国でもやっていないので、100カ国から取材が来た。世界最高水準に2015年までに追いつきたい。追いつくのは日本は得意なので、何とかなると思っている」と力説した。

 最後にオープンデータを取り巻く環境として、先日英国で開催されたG8の会合で、オープンデータ憲章が合意されたことを紹介。「オープンな政府データは情報時代の不可欠な資源」などという内容からなるもので、2014年に開かれる次回のG8で各国の進捗状況をレビューすることになっている、と説明した。

 続いて、総務省官房審議官(情報流通行政局担当)の谷脇康彦氏が登壇し、政府のオープンデータ戦略の方向性や具体的施策について講演した(写真4)。