関西テレビ放送は2013年6月25日、自動方調方式の衛星伝送装置(ポータリンク)を搭載した取材伝送車を新たに導入し、運用を開始したと発表した。

 新たな取材伝送車に搭載したポータリンクは、ボタンを押すことでアンテナが自動的に衛星を捕捉し、約2分後には伝送準備が整う。衛星経由で最大上り9MbpsのIP回線を確立できる。同一の衛星を利用して2回線の電話が映像伝送と同時に使用可能で、ENGカメラを利用した緊急中継にも対応する。

 車内の機器は座席1席分で、運転手以外に4人の乗車と取材機材を搭載できる。アンテナや車内の機器は取り外し可能で、建物やマイクロバス型の報道取材指揮支援車に移設すれば、伝送基地を設営できる。

 無線LANを利用した「準リアルタイム方式」による素材伝送にも対応する。準リアルタイム方式は関西テレビがクボテックと共同開発した伝送方式で、「無線LANのように速度が不安定な回線でも安定した映像・音声の伝送が可能」という。

 発電機には、エンジンの回転を利用したNMG発電システム(最大出力3kVA)を採用した。燃料が枯渇する災害時にはエンジンを停止した状態でも携帯電話機やパソコンなどのIT機器を充電できるよう、大型のリチウムバッテリー(900Wh)も搭載している。

 関西テレビは、今回の取材伝送車を導入した背景について、「東日本大震災の発生直後、手動方調方式のポータリンクを取材車両で運搬し、大型の中継車が進入できないエリアから生中継を行った」「このときの経験から、伝送準備にかかる時間の短縮や、携帯電話機が使えなくても安定した連絡手段を確保することの重要性を認識した」と説明している。