ソフトバンクは2013年6月21日、定時株主総会を開き、米スプリント・ネクステル買収の進捗状況などについて説明した。孫正義社長は「まだ油断できないが、形勢は逆転して大きく前進した」として、7月上旬の買収完了に自信を示した。株主からの提案を受け、ソフトバンクモバイルの加入者同士だけでなく、イー・アクセスやウィルコムの加入者とも通話を無料化すると公約した。

 孫社長はスプリント買収について「暗雲が立ち込めているとの報道が出ているが、買収に必要な4種類の許認可のうち、3つ(証券取引委員会、対米外国投信委員会、司法省)は得た。残るはFCC(連邦通信委員会)のみだが、手続きは順調に進んでおり、近い将来、確実に得られる」とした。

 米衛星放送のディッシュ・ネットワークが対抗の買収提案を出したが、ソフトバンクも買収総額を積み増して対抗した(関連記事)。ディッシュは対抗提案を断念すると発表(関連記事)しており、「6月25日の株主総会まで油断できないが、買収完了に向けて大きく前進した」(孫社長)と総括した。

 一方、スプリントが完全子会社化を目指す米クリアワイヤについては「最も必要な電波を持っており、電波がなければ元も子もない。ディッシュの株式公開買い付け(TOB)が成功すると、スプリント買収が成功しても大きな障害になる」と重要性を説明。ただスプリントが6月20日(米国時間)に残りの株式の買い取り額を引き上げると発表(関連記事)し、クリアワイヤ取締役会は従来のディッシュ支持からスプリント支持に切り替えた。

 その後、スプリント支持を表明する重要株主も新たに増えており、クリアワイヤはディッシュとの交渉を打ち切る方針を示している。クリアワイヤは7月8日に臨時株主投票を予定しており、まだ予断を許さない状況ではあるが、「形勢は逆転した」(孫社長)と説明した。

 スプリント買収後の事業拡大についても自信を示した。社内ではボーダフォン日本法人とスプリントを比べ、買収後の事業拡大はどちらが難しいかという議論があったという。買収時のボーダフォン日本法人は、「契約数が横ばいで、営業利益が真っ逆さまに落ちていた。端末のラインアップも少なく、プラチナバンドもなかった」(孫社長)。

図1●ボーダフォン日本法人の買収時とスプリント買収時の状況の比較(プレゼンテーション資料から抜粋)
図1●ボーダフォン日本法人の買収時とスプリント買収時の状況の比較(プレゼンテーション資料から抜粋)
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 一方、スプリントは契約数が増加傾向で、営業利益も反転傾向にあると主張する。端末ラインアップも充実し、プラチナバンドに相当する850MHz帯も7月から使えるようになる(図1)。「競争相手ははるかに強くなるが、携帯電話事業が初めての経験だったボーダフォン日本法人の買収時に比べれば、今回は様々なノウハウも蓄積されており、楽なのではないか」(同)との見解を示した。

 さらにスプリント経営陣との毎週の会合により、営業費用の削減や設備投資の効率化が見えてきた。前者は2014~2017年度の平均で年間20億ドル超、2017年度には同30億ドル超の営業費用削減、後者は2017年までの累計設備投資額で32~36%の抑制を見込んでおり、「利益は確実に反転できる自信を持っている」(孫社長)とした。