「製品を魅力的に伝えるビデオの作り方」をテーマにしたワークショップが、2013年6月17日に開催された。主催は米Evernote。同社によるサービス開発コンテスト「Evernote Devcup 2013」の締め切りを前に、日本人が苦手とされるプレゼンテーション力の向上を狙って行われた。Evernote Devcupの応募では、ビデオによる製品紹介が求められており、事前審査の資料として使われる。過去の応募でも、製品自体の魅力を伝えられないために、予選を通過できなかった作品が多かったことから企画された。

 今回のワークショップは、Evernote日本法人会長の外村仁氏による分析セッション「勝てるビデオ・負けるビデオ」、映像制作の専門企業であるモバーシャルの川合泰祐氏によるノウハウセッション「実践講座」、外村氏と川合氏、モバーシャルのディレクター高野翔太氏、そして飛び入り参加のジャーナリスト林信行氏によるパネルセッション「ケーススタディ解説」の3部構成。いずれのセッションもノウハウが満載された内容だった。

写真1●講演するEvernote日本法人会長の外村仁氏
開催場所は、ドコモ・イノベーションベンチャーズ内にあるラウンジ。同ラウンジは開設したばかりで、今回のワークショップがこけら落としイベントとなった。
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 外村氏の講演内容は、製品をアピールする際の心構えと言えるようなもの(写真1)。過去のDevcupで審査員を務めた経験から、
・その製品が、何らかの問題を解決すること
・独自の解決法に力点を置いて説明すること
・技術から発想しないこと
・利用シーンを思い浮かべられること
・異なる立場の人に見せてみること
という5項目のチェックポイントを提示した。過去に応募された作品のビデオ紹介を交え、製作者の意図が上手に伝わっている例とそうではない例を提示した。

 サンフランシスコ在住の同氏は「今回のワークショップのために来日した。テクニックも重要だが、製品の本質を問い直し、その魅力を明確に示すことがもっと大事だということを伝えたかった」とワークショップ開催の意義を強調した。

写真2●モバーシャルの川合副社長
Web向けビデオ制作のプロの立場から、たくさんのヒントを提供した。
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 続く川合氏のセッションは、Web向け動画制作のプロ直伝のノウハウが散りばめられた内容(写真2)。例えば、
・画面の遷移はカメラ撮影ではなくキャプチャを利用する
・実写では、一眼レフカメラを使って背景のボカシ感を見せる
・実写撮影では三脚を使う
・音楽は「Premiumbeat.com」「audiojungle.net」といったサイトから購入するのが便利
・MOVAAA!!(モバー)など、動画マーケティングサイトを参照する
といったものだ。これらを採用することで、プロでなくても格段に動画の質が上がるという。また「予算が厳しくて外注作業を絞るとすれば、編集作業を外注すべき」といったノウハウも伝えられた。

 川合氏によると、すべてのビデオは、「アニメーションか実写か」(表現方法)、「機能説明かコンセプトか」(狙い)という2つの軸で分けられた4象限に分類できるとし、著名なビデオを配置したスライドを見せた(写真3)。そのうえで「皆さんのサービスが、どこに向いているのか考えた方がいい」とアドバイスした。

写真3●既存のビデオの分類
「アニメーションか実写か」(表現方法)、「機能説明かコンセプトか」(狙い)の2軸を基に、4象限に分類した。
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 同氏も外村氏と同様、「失敗する動画は、目的が欠如している」という。動画表現としても、文章と同様に「5W1H」が大事で、誰に伝えるのか、どんな場面で使われるのかなどを強く意識する必要があるというわけだ。

 続いて、Evernote本社の製品ビデオ担当者からのビデオメッセージも紹介された。短時間ながら、製品ビデオに盛り込むべき内容や利用すべき機材、品質を上げるための撮影方法、さらには友人や家族に見てもらうことで品質が上がるといったティップスが多数紹介された。最後のセッションでは、Devcupの応募作品やモバーシャルの作成映像などを使って、実例ベースに視聴者が受ける第一印象や長所、改善点などが登壇者4人によってディスカッションされた。

 今回のワークショップでは、Evernote Devcup 2013が改めて紹介された。優秀作には、同社の開発者会議の招待権利や賞金を獲得できる優秀賞のほか、Evernote本社での開発サポートを受けられる「Evernote Accelerator」が用意されている。作品の提出締め切りは6月28日だ。外村氏は「ハッカソンなど、週末2日くらいあればアプリを作成できる。ぜひ挑戦してほしい」とコンテストへの参加を呼び掛けた。