図1 「OmniSphere」の全体像。無線LANと有線LANをまとめて制御できる
図1 「OmniSphere」の全体像。無線LANと有線LANをまとめて制御できる
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 インターネットイニシアティブ(IIJ)とACCESSの合弁会社であるストラトスフィアは2013年06月11日、OpenFlowなどSDN(Software Defined Networking)の技術を使って企業のLANを効率よく管理するための製品「OmniSphere」(オムニスフィア)を開発したと発表した。企業の物理ネットワーク上に、従来よりも柔軟に論理ネットワークを作ったり、その構成を変更したりできるという。有線LAN、無線LAN両方に対応する予定(図1)。2013年8月の提供開始を目指す。

 この製品はネットワークの管理・制御を担うソフトウエア「OmniSphere Engine」と、OmniSphereに対応したハードウエアから構成される。有線LANの場合は対応ハードウエアとして「OmniSphere対応スイッチ」、無線LANの場合は「OmniSphere対応アクセスポイント」が必要だ。

図2 従来の論理ネットワーク構成方法と、「OmniSphere」の比較(有線LANの場合)
図2 従来の論理ネットワーク構成方法と、「OmniSphere」の比較(有線LANの場合)
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 管理者はあらかじめ、OmniSphere Engineに企業内で利用したいレイヤ-2の論理ネットワークと、そこに接続可能な端末の認証情報(MACアドレスなど)を登録しておく。有線LANの場合、パソコンなどの端末をOmniSphere対応スイッチにつなぐと、OmniSphere Engineとの間で認証を実行。問題なければ適切な論理ネットワークに接続できる仕組みだ(図2)。端末の認証は、MACアドレス認証とユーザー認証(ユーザー名とパスワード)のいずれか、もしくは両方を利用できる。無線LANの場合も基本的な動作は同じで、無線LAN対応端末がOmniSphere対応アクセスポイントに接続すると、アクセスポイントとOmniSphere Engineとの間で通信して認証と論理ネットワークの割り当てを実行する。パソコンなど、エンドユーザーが利用する端末側には、特別な設定やソフトウエアの導入は必要ない。

 さらに、OmniSphereでは拠点間の接続などにも対応するため、VXLANのようなレイヤー2 over レイヤー3のトンネリングプロトコルにも対応する予定だ。OmniSphere対応スイッチとOmniSphere対応アクセスポイントがトンネリングプロトコルに対応するほか、トンネルを終端するOmniSwitchNodeというゲートウエイを用意。制御ソフトであるOmniSphere Engineは、「どのスイッチ/アクセスポイントと、どのOmniSwitchNodeとの間でトンネルを構成するか」を管理する。これを利用すると複数の拠点内に構成されたレイヤー2の論理ネットワーク同士を、拠点間をつなぐIPネットワークの上に形成されたレイヤー2 over レイヤー3トンネルによって接続できる。さらに、拠点内、拠点間の接続構成をOmniSphere Engineからまとめて管理・変更することが可能だ。このほか、ストラトスフィアではOmniSphereと検疫システムとの連携や、企業内の既存のディレクトリーサービスとの連携も進めていきたい考えだ。

 OmniSphere対応スイッチ、OmniSphere対応アクセスポイントとOmniSphere Engineとの間で制御情報をやり取りするプロトコルとしては、OpenFlowなどを利用する。ただし、レイヤー2 over レイヤー3トンネルの形成などOpenFlowでは制御できない部分に関しては、ほかのプロトコルで制御するとしている。

 従来、企業の拠点内でレイヤー2の論理ネットワークを構成する際には、管理者がスイッチのポートにVLANなどを設定する必要があった。人事異動、フロアのレイアウト変更などが起こると、複数のスイッチに対して個別にVLANの設定をし直すことになる。複雑なネットワーク変更の際には、スイッチの配置や配線を物理的に変えたり、新しいネットワークの規模に合った製品に入れ替えたりするケースもある。一方OmniSphereでは、論理ネットワークの構成を変える際はOmniSphere Engineの設定をソフトウエア上で変更すればよく、物理的な機器構成や配線を詳細に考慮しなくても済む点がメリットだという。また、「今まで無線LANを使って論理ネットワークを構成する際には、論理ネットワークごとに1個のSSID(Service Set IDentifier)を使っていた。OmniSphereではネットワーク全体で1個のSSIDがあれば済む点も特徴だ」(ストラトスフィア関係者)。

 現在、ストラトスフィアではOmniSphereのソフトウエア開発を進めながら、商用化に向けて国内のネットワーク機器メーカーにOmniSphere対応スイッチやOmniSphere対応アクセスポイントの製品化を提案しているという。なお、2013年6月11日(展示会場は12日)から開催中のイベント「Interop Tokyo2013」会場内の「SDN ShowCase」で、OmniSphereの参考出展を見ることができる。