2013年6月4日から8日まで、台湾・台北市で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2013」では、パーソナルコンピューティング機器の主役がノートパソコンからタブレット、またはそれをベースとする「2イン1」機器へと移行していく流れが示された。タブレットは高機能・高性能化の一方で、中国や台湾のメーカーによるSoC(system on a chip)を採用することで低価格化が加速する傾向もみられた。

 こうしたSoCを採用した低価格タブレットは、これまでも並行輸入などの形で日本市場にも入ってきていた。今後は、大手メーカーや新興メーカーがこれらのSoCを積極的に採用し、低価格モデルを拡充する。

 台湾MSIは、低価格タブレットの「Primo」(プリモ)シリーズを発表した。新興国市場を中心に展開する製品だ。Primoシリーズは、中国の大手SoCメーカーであるオールウィナーテクノロジー(Allwinner Technology)製SoCを採用しており、9.7型IPSパネルを搭載した「Primo 93」や、7型液晶搭載モデルの「Primo 73」などをラインアップしている。画面の解像度は1024×768ドットや1024×600ドットと高くないが、既存製品よりも安価にすることで市場の拡大を図る考えだ。

 台湾エイスーステック・コンピューター(ASUS)も、「129ドルタブレット」として発表した「MeMOPad HD7」では台湾メディアテック製のSoCを採用する。台湾エイサーが「ファブレット」と称する「Liquid S1」もメディアテック製SoCを使っている。メディアテック製SoCは価格の安いタブレットやスマートフォンへの採用が増えつつある。

COMPUTEXのMSIブース。低価格タブレットコーナーには常に人だかりがあった
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MSIの安価なタブレットの一つ、7型液晶搭載モデルの「Primo 73」。このほか、9.7型IPSパネルを搭載した「Primo 93」もある
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台湾エイスーステック・コンピューターの「MeMOPad HD7」も、台湾メディアテック製のSoCを採用している
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発表会でMeMOPad HD7の販売価格を明らかにしたときの様子。8GBモデルは129ドルだ
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 さらに、現在自作パソコン向けのグラフィックスボードを販売しているメーカーも、タブレット市場に参入しようとしている。香港イノビジョンマルチメディア(Inno3D)は、オールウィナーやメディアテック、中国ロックチップエレクトロニクスといったメーカーのSoCを採用したタブレットをラインアップする。同社のサブブランド「ax」で、新興国市場を中心に製品を展開していく。Inno3Dでセールスを統括するスタンリー・ウォン副社長は「格安SoCを搭載したタブレットは、“安かろう悪かろう”というイメージが強いが、グラフィックスボードの製造で培った生産管理技術を武器に、低価格で品質も高い製品をそろえたい」とする。

香港イノビジョンマルチメディアの7型タブレット。Cortex-A9を2個内蔵したメディアテック製SoCを搭載している
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デュアルSIM対応モデルも用意している
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 エヌビディアのグラフィックスチップを搭載したボードを主力製品にしている香港ギャラクシーマイクロシステムズは、エヌビディアのTegra 4を搭載したタブレットなどを展示した。そのほかのグラフィックスボードメーカーもタブレットを出展するなど、「ポストパソコン時代」の主力ビジネスの一つとして、タブレット市場に注目するメーカーは多い。COMPUTEX TAIPEIで低価格タブレットを展示した各社は、「ブランド力がないメーカーの製品だと、7型タブレットは100ドル前後、10型クラスで150ドル前後が主流になる」とみている。一部のメーカーは日本市場にもこうした価格帯の製品を展開する考えを示している。

香港ギャラクシーマイクロシステムズが発売を予定しているタブレット群
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エヌビディアのTegra 4などを採用する
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