写真1●KDDIが公表iOS向け2GHz帯LTEの実人口カバー率。このバンドが誤記問題の大元となっていた
写真1●KDDIが公表iOS向け2GHz帯LTEの実人口カバー率。このバンドが誤記問題の大元となっていた
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写真2●800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯を利用できる端末がまちまちであり、ユーザーに混乱を与えていた
写真2●800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯を利用できる端末がまちまちであり、ユーザーに混乱を与えていた
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 KDDIは2013年6月10日、同日開催したLTE障害説明会見の中で(関連記事)、これまで非公表としてきた現時点で同社のiOS向けのLTEネットワークである2GHz帯の実人口カバー率を公表した。2013年5月末の段階で、5MHz幅以上(主に37.5Mビット/秒)のエリアは71%(2013年3月末時点では63%)、10MHz幅以上(主に75Mビット/秒)のエリアは20%(同14%)、15MHz幅(112.5Mビット/秒、カテゴリー4端末を利用した場合。現在発売中のカテゴリー3端末では100Mビット/秒)のエリアは1%以下(同なし)である(写真1)。

 同社は800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の3つのバンドを使ってLTEのネットワークを構築している。それぞれのバンドでのエリア展開には濃淡があり、同社では800MHz帯を全国隅々まで広げるエリア拡張用のバンドとして利用。2GHz帯は、キャパシティー拡張用途として活用する方針を示している。

 ただし現時点で同社が発売する端末は、これらすべてのバンドに対応する機種はない。3バンド対応は2013年夏モデルのAndroid端末からの対応となり、iOS端末は現時点では2GHz帯のみ、春モデルまでのAndroid端末は800MHz帯と1.5GHz帯に対応するというように機種ごとに利用できるバンドが分かれ、ユーザーに混乱を与えていた(写真2)。

 そんな中、KDDI自身もAndroid端末だけが利用できる800MHz帯LTEサービスの最大速度や実人口カバー率を指しているにもかかわらず、2GHz帯のLTEサービスしか利用できないiOS端末を含めた形で、「受信最大75Mbpsの超高速ネットワークを実人口カバー率96%に急速拡大」などとカタログに誤記。総務省から5月10日に行政指導を受け(関連記事)、消費者庁からは措置命令を受けた(関連記事)。

 消費者庁からの措置命令を受け、iOS端末で75Mビット/秒のサービスを利用できるエリアは、3月末の段階で実人口カバー率で14%であることが判明してしまった。当初は「(キャパシティー用途としている2GHz帯が)接続率の比較軸になるのを少し恐れている」(4月30日の決算会見での同社田中孝司社長の発言)と2GHz帯の実人口カバー率の公表を避けてきた。しかし75Mビット/秒対応エリアの“14%”という数字が独り歩きし、「多くの問い合わせをいただいたため(37.5Mビット/秒エリアを含めた)2GHz帯のLTEの実人口カバー率の公表に踏み切った」(田中社長)という。

 ただ田中社長は「人口カバー率の定義は各社によって異なり、どこからをエリアとして判定するのかも競合他社の状況は分からない。利用者の誤解を招かないためにも、業界で統一した基準に持っていかなければならない」と続けた。

 現在、総務省の研究会や業界団体で表示方法に関する議論が進んでいるという。なお通信サービスの広告の適正表示については、通信事業者などによる電気通信サービス向上推進協議会が策定した自主ルール「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドライン」が存在する。通信速度や人口カバー率などの表示はユーザーに誤認を与えやすいことから、4月16日に同ガイドラインが改訂されたばかりだ。