写真1●インドネシアでの渋滞抑制実験でホンダが用意したスマホアプリ(画面は2013年2月までの実験で利用したもの)。周囲の車と同調して走る「緑色の状態」を維持すると、渋滞を抑制できることを実証した
写真1●インドネシアでの渋滞抑制実験でホンダが用意したスマホアプリ(画面は2013年2月までの実験で利用したもの)。周囲の車と同調して走る「緑色の状態」を維持すると、渋滞を抑制できることを実証した
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写真2●本田技術研究所四輪R&Dセンターの越膳孝方渋滞抑制プロジェクトリーダー
写真2●本田技術研究所四輪R&Dセンターの越膳孝方渋滞抑制プロジェクトリーダー
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 ホンダは2013年6月10日、インドネシアで渋滞抑制と緩和のためのスマートフォンアプリをトライアル配布し始めた。ジャカルタの州警察の職員やインドネシアにあるホンダの現地法人の従業員を対象に、合計で100人ほどにスマホアプリ(ベータ版)を配布する。トライアル期間は2013年8月までの約3カ月間に限定した(写真1)。

 車の急増に道路網の整備が追いついていないインドネシアでは裏道などが少なく、朝晩のラッシュ時間帯にはあちこちで慢性的な渋滞が発生しており、社会問題になりつつある。そこでホンダは独自に研究を進めている渋滞抑制のための「同調走行」を支援するAndroid対応アプリを用意。インドネシアでも急速に広まっているスマホで、ドライバーが手軽に使えるようにしたい考えだ。

 ホンダは2012年9月から2013年2月にかけて、インドネシアでこのアプリの公道実験(高速道路での実験)を実施した。ドライバーがスマホの画面を見ながら周囲の車と同調して動くよう運転することで、渋滞抑制に一定の効果があることを確認した。

 スマホの利用形態は2種類。1台の車で単体で使うタイプのほか、複数の車がスマホを介してクラウドにつながり、アプリを利用する複数台の車が協調して走る方式も構築した。クラウドを使った方式では、渋滞発生を最大で6分遅らせることができた。この時は最大14台の車でアプリを利用した。

 ホンダが提唱する同調走行とは簡単にいえば、「周囲の車に自分の車の動きを読ませやすくする滑らかな走りのこと」。本田技術研究所四輪R&Dセンターの越膳孝方渋滞抑制プロジェクトリーダーは、こう説明する(写真2)。加速や減速が緩やかで、周囲から見て予期せぬ動きが少なく、結果的に急ブレーキなどによる車の「詰まり」が起こりにくくなるという。これで渋滞を抑制する。

 ホンダのスマホアプリでは、こうした理想的な同調走行の状態を画面上で緑色で表示して、この状態を維持して走るようドライバーに促す。実験では同調走行を続けると、燃費も20%以上向上することが分かった。ドライバーには今後、ガソリン代の節約効果をアピールして、結果的に渋滞を抑制していきたいという。

 逆に渋滞につながりやすい「非同調走行」になると、アプリ画面が青色に変わってドライバーに警告する。非同調の典型例は割り込み走行や極端なノロノロ運転で、後続車が詰まりやすくなる走りを指す。

 一言でいえば、「マナーの悪い走りのこと。当社のスマホアプリはドライバーのマナー向上に役立つのではないかと期待されている」(越膳リーダー)。ジャカルタの州警察は、その点にも注目している。

 ホンダは今後、同社のインターナビと今回のスマホアプリの融合も検討しており、既にインターナビの開発チームと話し合いを始めているという(関連記事:GWの気になる天気と渋滞、利用者参加型サービスを展開するウェザーニューズとホンダ )。