写真●SAPジャパンの安斎富太郎社長
写真●SAPジャパンの安斎富太郎社長
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 SAPジャパンは2013年6月5日、クラウド事業に本格参入すると発表した。独SAPが提供しているSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を今後、全て日本で提供する。

 SAPジャパンの安斎富太郎社長(写真)は、「オンプレミス型のシステムが得意なSAPというイメージが強いかもしれないが、経営スピードの向上にはクラウドが欠かせない。グローバルではSAPのクラウドサービスの利用者数は既に世界最多になっている」と強調した。

 SAPジャパンは4月1日付で、クラウド関連の営業企画などを担当する「クラウドファースト事業本部」を設立。現時点で50人程度が所属している。クラウドファースト事業部は、独SAPが提供するSaaSやPaaSを販売するほか、SAPのパートナー企業が提供するクラウドサービスも扱う。クラウドファースト事業本部の馬場渉本部長は、「独SAP本社の開発は現在、全てがクラウドファーストになっている。将来的にSAPのソフトウエアはすべてクラウドに移る」と説明する。

 独SAPは、同社が提供するSaaSを(1)「People」、(2)「Money」、(3)「Customer」、(4)「Supplier」---という四つのラインアップに分類して提供する。

 具体的には、(1)では買収した米サクセスファクターズが提供するタレントマネジメントのSaaSを中心に、人事や給与計算などを提供。(2)では、経費精算の「SAP Cloud for Travel」や、会計、請求支払い処理などの機能を有する「SAP Cloud for Financials」などを提供予定だ。SAP Cloud for Travelは、「今夏に日本でも提供を始める」(馬場本部長)。(3)はソーシャル解析の「SAP Cloud for Social Engagement」などを、(4)は買収した米アリバの購買支援SaaSを提供する。

 (1)から(4)のSaaSは、「単純に日本で使えるようにするだけでなく、日本の商習慣に合わせた日本化を施して提供する」と馬場本部長は話す。(1)~(4)に含まれるアプリケーションには、独SAPがこれまで日本で提供してこなかった中堅企業向けのSaaS型ERP「SAP Business ByDesign」の機能も含まれているという。

 独SAPは5月に、同社のクラウドサービスの稼働環境を全て、インメモリーデータベース「HANA」を利用した基盤「SAP HANA Cloud Platform」に統一すると発表。買収したSaaSも対象となり、サクセスファクターズのSaaSは年内にもSAP HANA Cloud Platformに移植される見込みだ。SAPのクラウドサービスは現時点で全てドイツと米国にあるデータセンターから提供される(関連記事:SAPクラウド戦略の中核「SuccessFactors」、日本では年内の顧客数の倍増目指す)。