NECは2013年5月30日、アプリケーションサーバーの新版「WebOTX Application Server V9」の出荷を開始した。CPU使用率の上昇やメモリー不足などによるシステムダウンの予兆を検知し、自動で回避する機能を搭載していることが特徴だ。価格は24万円から。同社は3年間で、WebOTXシリーズを合計8万ライセンス販売する目標を掲げる。

 NECは過去の技術サポートのノウハウを基に、システムダウンや性能劣化を防ぐための監視項目や、そのしきい値をWebOTX Application Server V9にデフォルトで設定。システムの稼働状況を見張る監視スレッドが異常を検知すると、一部のスレッドを停止させるなどして、消費リソースを抑制する。システムダウンに陥ることを未然に防ぐことができる。リソースの負荷軽減を検出すると、停止していたスレッドを再開させる。異常を検知した際には、原因解析に必要なヒープダンプを自動採取するため、システムの問題箇所特定などに利用できる。

 異常を検知する機能は同社の既存製品や他社製品にもあるが、「通常、数十のパラメーターを設定する必要がある。適切な監視項目や設定すべき値を決定する作業も複雑だ」と、NECシステムソフトウェア事業部の朝井義久マネージャーは話す。設定作業には数週間かかるうえ、中堅・中小企業の場合、外部に委託したり、設定自体をしない場合もあるという。あらかじめ製品に設定を組み込むことでユーザーは、ほとんど手をかけることなく、予兆検知機能を活用することが可能だ。

 ライセンス体系は簡素化し、システム全体で使用するCPUコア数のみを課金単位とした。従来、仮想サーバー上でWebOTXを使用する場合は、ライセンス数の算出方式が複数あり、ユーザーにとって複雑だった。

 最少構成時の価格も低減した。1CPU2コアの場合、従来のライセンス方式に比べて約67%安くなるという。総コア数が32以上の大規模システム向けには、価格を20%安くするボリュームディスカウントも新設した。

 そのほか、複数サーバーのクラスタ内に共通の仮想メモリー領域を確保して、大量のデータを高速に処理するインメモリーデータグリッド製品を活用することで、性能面の向上を図る。Webアプリケーションのレスポンス時間を最大で7分の1に短縮するという。

 WebOTX Application Server V9は、Java EE6の標準仕様で規定されたプロファイルをサポートするほか、ユーザーが必要な機能のみを選べる「カスタム・プロファイル」機能を提供する。Java EE5の全仕様を盛り込んでいた従来版が起動時間に数十秒を要していたのに比べて、最少構成を選択した場合は、4秒未満での起動が可能になる。