「meQuanics」の画面。量子回路をパズルで表現している。回路を短縮したり、結合したりしながら、最適化を目指す
「meQuanics」の画面。量子回路をパズルで表現している。回路を短縮したり、結合したりしながら、最適化を目指す
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meQuanicsを開発した、NII 情報学プリンシプル科学研究系の根本香絵教授
meQuanicsを開発した、NII 情報学プリンシプル科学研究系の根本香絵教授
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meQuanicsが、量子コンピューターの研究開発に大きく貢献すると期待する
meQuanicsが、量子コンピューターの研究開発に大きく貢献すると期待する
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 国立情報学研究所(NII)は2013年5月28日、ゲーム形式で量子コンピューターの研究を進めるためのWebアプリケーション「meQuanics」(メカニクス)を公開した。量子コンピューターの回路をパズルで表現。特別な知識を持たないユーザーでも、パズルを解くことで、量子コンピューター研究の重要課題である「量子回路の最適化」に貢献できる。

 meQuanicsは、量子コンピューターを積んだ船を操作するという設定のゲーム。量子回路を示すパズルのサイズを小さくできれば、船の速度が向上する。「ゲームは量子力学に基づいて作られているが、ゲームをする人にはそれは見えないような作りになっている」(NII 情報学プリンシプル科学研究系の根本香絵教授)。ルールに沿ってパズルを動かす操作が、実はそのまま、量子回路の最適化という難題に取り組んでいることになるという仕掛けだ。

 「量子回路を最適化すると、量子コンピューターの開発が格段に容易になる。性能も大幅に向上する」。根本氏は、量子回路の効率化を「喫緊の課題」と強調する。

 だが、量子回路の最適化は一筋縄ではいかないという。コンピューターで最適解を導き出すという手法が通用しないためだ。人間の直感や知恵の方が、最適解を見つけ出せる可能性が高い場合がある。そこで、課題をゲームという形にしてできるだけ多くの人に試行してもらい、最適解を見つけてもらう。

 この取り組みは、欧米を中心に広がりつつある「オープンサイエンス」という研究手法に基づいている。実験データや失敗経験などの知識を広く共有することで、短時間で優れた成果を生み出すことを目的とする。中でも「注目を浴びているのがゲーム形式」(根本氏)。たんぱく質の構造解析をテーマにした「Foldit」は24万人を超えるユーザーを集め、既に成果も上げているという。

 ゲーム形式の特徴は、誰でも楽しみながら、最先端の研究に貢献できること。根本氏は「ショップの店員が空き時間に遊んだゲームが成果につながった例もあると聞いている」とし、より多くの人に参加してほしいと期待する。

 現在は体験版という位置付けでWebアプリケーションとして提供しているが、iOSやAndroid、Windows、MacOS、Linuxなどへの展開も予定する。「電車の中などで、スマートフォンやタブレットを使って楽しんでほしい」(根本氏)。ユーザー同士が成果を競い合うような仕掛けも、今後追加していくという。