写真1●東京都内で開催された「Open Compute Project Engineering Workshop」
写真1●東京都内で開催された「Open Compute Project Engineering Workshop」
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写真2●Open Compute Project FoundationのCOO(最高執行責任者)であるコール・クロウフォード氏
写真2●Open Compute Project FoundationのCOO(最高執行責任者)であるコール・クロウフォード氏
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写真3●サーバー内にバックアップバッテリーを搭載可能な「Open Rack V2」
写真3●サーバー内にバックアップバッテリーを搭載可能な「Open Rack V2」
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 サーバーなどのハードウエアの設計図や仕様のオープンソース化を推進する団体、米オープン・コンピュート・プロジェクト(OCP)が2013年5月27日、東京都内で開発者向けのイベント「Open Compute Project Engineering Workshop」を開催した(写真1)。OCPを主導する米フェイスブックのエンジニアなどが来日し、サーバーラックの新仕様などを説明した。

 OCPは、フェイスブックが2011年4月に開始したプロジェクトで、2011年10月には運営団体としてOCPファウンデーションが設立されている。当初はフェイスブックが自社設計したサーバーやラック、電源装置や冷却設備などの設計図をオープンソースとして公開していた。現在はそれらに加えて、ストレージ(関連記事)やネットワークスイッチ(関連記事)の設計図のオープンソース化も進めている。

 今回のイベントはOCPに加えて、日本でOCPに賛同する団体であるオープンコンピュートプロジェクトジャパン(OCPJ)、5月23日に台湾で設立したオープン・コンピュート・プロジェクト・タイワン(OCPT)などが参加。OCPファウンデーションのCOO(最高執行責任者)であるコール・クロウフォード氏は基調講演で、「大規模データセンター時代にふさわしいハードウエアの仕様を、業界の英知を結集して考え直すことがCOPの目的だ」と強調した(写真2)。

 クロウフォード氏は、近年のデータセンターが求める要件にハードウエアの仕様が追いついていない例として、IT業界で標準的な「19インチラック」の例を挙げた。「19インチラックは、50年以上前に通信業界のために作られた仕様で、音楽業界やIT業界は既にあったものを採用しただけだった。そのため、サーバーなどの消費電力が拡大した今日では、ラックの仕様が合わなくなっている」(クロウフォード氏)。そこでOCPでは、新しいサーバーラックの仕様である「Open Rack」を作成。サーバーやストレージの電源装置をラック単位で集約し、各ハードには12Vの直流で電力を供給する仕組みを作るなどして、従来よりも多くのサーバーやストレージを格納できるようにした。

 またOCPは現在、ラックの仕様の第二世代に当たる「Open Rack V2」を策定中だ。Open Rack V2は、ラックにバックアップ用のバッテリーを内蔵できる(写真3)。従来のOpen Rack仕様では、UPS(無停電電源装置)に相当する「バッテリーラック」が6ラックにつき1個ずつ必要だったが、Open Rack V2ではラック内にバッテリーを内蔵することで、バッテリーラックが不要になった。

 OCPが公開した仕様に基づくハードウエアは、フェイスブック以外では米国の大手IaaS(インフラストラクチャ・アズア・サービス)事業者である米ラックススペース・ホスティングや、ゲーム会社である米ライオット・ゲームスが採用しているほか、20社近くがOCP仕様を利用したり検証したりしているという。OCPは、OCP仕様のハードウエアの普及を進めるために、OCPの認定仕様である「OCP Certified」や「OCP Ready」といった仕組みの整備を進めている。日本のOCPJやOCPTは、これらOCP仕様の国内での普及や、各国のニーズをOCPへと伝える活動などを行うことが、同イベントで発表されている。

 Open Compute Project Engineering Workshopは5月28日にもセッションが行われ、米インテルが提唱するラック内インターコネクト技術に関する説明などが行われる予定である。