写真●大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長
写真●大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長
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 「ビジネス現場から依頼を受けて仕事をしていると、結局はデータ分析の“便利屋”になってしまう。自分たちから現場に対して、こんなデータ分析をしませんかと“営業”していかなければならない」──。

 ガートナー ジャパンが2013年5月27~28日に都内で開催しているイベント「ビジネス・インテリジェンス&情報活用 サミット 2013」で、大阪ガスのデータサイエンティストである河本薫氏が講演した。「分析力を武器とするIT部門になるには?」と題したテーマで語り、多くの聴衆を集めた(関連記事:ナニワのデータサイエンティストは、現場の「こうちゃうか?」を尊重)。

 大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンターの所長で、自身を含めて9人のデータサイエンティスト集団を率いる河本氏は、自分自身のこれまでの苦労を惜しげもなく披露。「ビジネス現場から門前払いされたり、それこそ便利屋扱いされたり、人材不足に陥ったりと、組織発足から約10年間、困難の連続だった」と振り返った。そうした苦労の末に得た教訓の1つが、実感のこもった冒頭のセリフにつながっている。

 河本氏は自身の経験から得た「データ分析に対する3つの勘違い」も紹介。「大量のデータや高度な統計分析に価値を置く」「分析力だけでビジネスを変えようとする」「KKD(勘と経験と度胸)を軽視する」ことに対しては、警鐘を鳴らした。そうではなく、データ分析に携わる人は「ビジネスの意思決定にどれだけ貢献できたかを重視するべき」「KKDを決して侮らない」ことを聴衆に呼びかけた。

 データ分析者には問題を解く力だけあればいいのではなく、ビジネス課題から解くべき問題を「見つける力」と、データ分析から得られた知識を現場に「使わせる力」の2つも必要だと説き、こうした力を持って行動できる人を「フォワード型分析者」と定義した。

 真のデータサイエンティストとは、こうした素養を持ち合わせた人であると、言い換えることができるだろう。

 また、分析ツールが充実している昨今は、データ分析者に必ずしも数学力は必要ないとし、代わって「発想力とコミュニケーション力」が必須だとも語った。この2つがないと、企業の現場で働く人たちが持つ「変わりたくないという心理的な壁」と「面倒くさいという壁」を打ち破れないと説明した。