「ユーザーインタフェースの変更はなぜ必要で、どのような考えに基づいて、どのようなプロセスで実行されたのか」。各種サービスの開発に携わる人に興味深いテーマのセッションが、2013年5月25日に行われた。セッションの機会を設けたのは、MacやiPhone周りの開発者コミュニティによる「第4回 iphone_dev_jp 東京iPhone/Mac勉強会」。題材は、2012年11月にリニューアルされたMac版Evernote(Evernote 5 for Mac)。講師は、同サービスのUIのリニューアルを指揮したジャック・ハーシュ氏である(写真1)。

写真1●Evernoteのジャック・ハーシュ氏
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 ハーシュ氏の講演の内容は、リニューアルのプロセスを8つのステップにまとめ、それぞれのステップで何を考え、何をルールとして実行していったのか説明していくというもの。実際の手書きラフスケッチや参照画面が散りばめられており、簡単に理解・実行しやすくまとめられていた。同様のUI変更の場面に限らず、プロジェクトの推進事例としても参考になる内容だった。

 講演の冒頭では、そもそも、リニューアルが必要と考えた背景が説明された。ハーシュ氏によると変更理由は二つ。一つは、「情報が散らばっている印象があり、特に初めて使う新規ユーザーにとっては脅威に感じられること」。もう一つが「個人のノートブックと共有ノートブックの区別がうまくいっていないこと」である(写真2)。

写真2●リニューアル前(左)とリニューアル後の画面の比較
初めて使うユーザーでも使いやすいインタフェースに変更した
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 背景の説明に続いて、講演はステップごとの位置づけと内容に移る。

ステップ1:目標設定

 実際のリニューアルにおける最初の取り組みは、「ゴール設定」である。何のためのリニューアルか、関係者の間で合意しておくのだ。ハーシュ氏は「夢を追え」と、少々大げさとも思える表現を使うが、それだけ重要なプロセスということだろう。

 今回のリニューアルの場合、具体的に設定されたゴールには4点あった。

1)左側のサイドバーをスケールすること
2)マイノートと共有ノートとの統合
3)検索機能の改善
4)UI(ユーザーインタフェース)を美しくすること