総務省は2013年5月20日、プライバシー保護に配慮したパーソナルデータ(個人に関する情報)の利用・流通促進の方策を検討する「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」がまとめた報告書案を公開し、パブリックコメントの募集を開始した。

 個人に関する情報を、いわゆる「ビッグデータ」として収集、利用することを考えている企業は、同報告書案に目を通し、論点を理解した方がよいだろう。以下、報告書案のうち、データの取得や本人同意についての論点を解説する。

論点1:「実質的個人識別性」に基づくパーソナルデータの分類

 今回の報告書案の特徴の一つは、「実質的個人識別性」という概念を導入し、パーソナルデータを3種類に分類した点だ。

 ビッグデータとして収集、利用される情報には、位置情報や購買履歴など、個人情報保護法における「個人情報」に当たるかが明確でないものが多い。実質的個人識別性とは、報告書案が示すパーソナルデータ利活用の基本理念を踏まえ、(形式論ではなく)実質的に判断される個人識別性を指すという。

 具体的には、以下のように分類される。

○実質的個人識別性があるデータ
・端末IDなど、個人のPCやスマートフォンなどの識別情報
・継続的に収集される購買・貸出履歴、視聴履歴、位置情報

○他のパーソナルデータと連結して初めて実質的個人識別性を持つデータ
・IPアドレス、クッキー
・匿名化されたパーソナルデータのうち、他のデータとの連結で再識別化の可能性があるデータ

○実質的個人識別性のないデータ
・国の統計など、再識別化を不可能または十分に困難にしたといえるデータ

 実質的個人識別性を持たないパーソナルデータは、保護の対象には当たらず、自由に利活用することができるとしている。

 再識別化の可能性がある匿名化データでも、以下の3条件を満たせば自由に利活用できるとしている。

1. 適切な匿名化措置を施していること
2. 匿名化したデータを再識別化しないことを約束・公表すること
3. 匿名化したデータを第三者に提供する場合は、提供先が再識別化をすることを契約で禁止すること