米司法省(DOJ)は現地時間2013年5月14日、電子書籍の価格カルテルを巡る問題で、米Appleが米シャーマン法(独占禁止法を構成する法令)に違反したと主張する文書を裁判所に提出したことを明らかにした。提出書類の中でDOJは、「Appleが中心となって価格操作を行った」とする見解を示している。

 DOJは2012年4月に、Appleと出版大手5社が協定を結び、電子書籍の小売価格をつり上げた疑いがあるとして提訴した。これら6社が書籍の販売価格を書店が自由に設定できる従来の「卸売りモデル」から価格の決定権を出版社が握る「販売代理店モデル」に契約形態を移行することで、以前は9.99ドルだった新刊やベストセラー書籍の電子版が12.99ドル~14.99ドルで販売されるようになったと指摘している(関連記事:米司法省、電子書籍の価格カルテルでAppleと出版大手を提訴)。

 DOJの提出書類では、Appleの故Steve Jobs前最高経営責任者(CEO)が米News CorporationのJames Murdoch会長兼CEOに宛てた電子メールの内容を公開。Jobs氏がMurdoch氏に販売代理店モデルに参加するよう誘う電子メールを送ったその2日後に、News傘下のHarperCollins PublishersはAppleとの契約に署名したという。

 また同書類によると、Jobs氏は出版社に販売代理店モデルを説明する際に「購入者が支払う金額は少しばかり多くなるが、それはあなた方も望んでいることだ」と話したことを、自身の公認伝記を執筆したWalter Isaacson氏に語っている。

 DOJはこれらの電子メールの内容および発言が価格操作を主導した明らかな証拠だとしている。

 米メディア(All Things DigitalおよびWashington Post)の報道によると、Appleに対する審理はニューヨーク南地区の連邦地方裁判所で6月3日に開かれる予定。Appleを除く出版5社(HarperCollins、ドイツVerlagsgruppe Georg von Holtzbrinck傘下のMacmillan、英Pearson傘下のPenguin Group、フランスLagardere傘下のHachette Book Group、米CBS傘下のSimon & Schuster)はすでにDOJと和解している。なおAppleも証拠書類を裁判所に提出し、「当社は米Amazon.comが支配する市場に新しい競争をもたらした」とDOJの見解に反論した。

[発表資料(PDF文書)]