写真1●共創ラボラトリーの様子
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写真2●マーキング技術研究所の高野昌泰研究主席(左)と、稲垣政富お客様共創ラボラトリーグループ長(右)
写真2●マーキング技術研究所の高野昌泰研究主席(左)と、稲垣政富お客様共創ラボラトリーグループ長(右)
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 富士ゼロックスが他社との協業を狙った「お客様共創ラボラトリー」を開設して、2013年5月で丸3年が経過した。この間、共創ラボラトリーには900社以上が来場。2013年9月までには1000社を突破する見通しになった。

 横浜みなとみらいにある富士ゼロックスR&Dスクエア内にある共創ラボラトリーの特徴は、専用ブースで富士ゼロックス自身の生産性向上や顧客サポート、マーケティングなどの取り組みを詳細に聞けること(写真1)。富士ゼロックスはあえて手の内を見せることで来場者の本音を引き出し、一緒に課題解決に向かうことを狙っている。それが共創ラボラトリーの基本コンセプトだ。工場見学ならぬ、企業活動全体の見学ツアーともいえる。

 2010年5月の開設以来、ほぼ毎週4~5社が来場。しかも来場者の30%は企業の役員層で、部長クラスまで含めると60%に達する。多くの企業幹部が、この共創ラボラトリーを訪れた。

 ここで富士ゼロックスは、社内で実施して効果があった取り組みを惜しげもなく披露する。すると来場者から「実は自分たちにはこんな悩みや課題があるんだと、教えてもらえることが多い。そこから共創が始まった案件がいくつもある」(稲垣政富お客様共創ラボラトリーグループ長、写真2右)。共同の勉強会に発展したり、お互いの現場を行き来する間柄になったケースもある。何より相手の悩みを直に聞ける絶好の機会を得たことになる。

 なかには、この共創ラボラトリーのコンセプトそのものを気に入り、自分たちも共創を始めたいので「ラボの仕組みを売ってほしい」と言われたことまであるという。

言葉がはやる前から複合機保守業務でビッグデータ活用

 ここ2年で来場者の関心が最も高かったのは、富士ゼロックスのビッグデータ活用事例だ。富士ゼロックスはビッグデータという言葉がはやる前から、デジタル複合機の保守業務で、故障予知のために各機器からデータをネット経由で取得。トラブルが起きる前に担当者が現場に駆け付ける仕組み「TQMS-Uni(トレース品質管理システム)」を展開してきた実績がある。この取り組みには多くの来場者が釘付けになるという。

 「ビッグデータ活用というとソーシャルメディアなどを使ったマーケティング領域の話題が多いが、当社のようなBtoBでの取り組みに興味を示す企業も少なからずいる。特にメーカーは製品販売後の保守・サポート業務を改善したいと思っているので、数多くの質問をいただく」と、稲垣グループ長は語る。

 富士ゼロックスは共創ラボラトリーのために、自社の現場から人を呼んでまで対応する。TQMS-Uniを構築してきた富士ゼロックス研究技術開発本部マーキング技術研究所の高野昌泰研究主席(写真2左)は、来場者の求めに応じて共創ラボラトリーからお呼びがかかることが多い“人気講師”になっている。

 高野研究主席はビッグデータ活用で共創を加速させるため、キーテクノロジーとなっているデータマイニングのプラットフォームを用意したほどだ。共創パートナーが少ない投資でデータマイニングを開始できるように、画面インタフェースやデータベースは富士ゼロックスが既に運用しているものを提供し、その代わりにデータマイニングの中核部分を共創パートナーと共同研究する。

 「ビッグデータ活用はまだまだ新しい領域なので、大学も含めて一緒に研究できる環境を用意した方が発展する可能性が高い。共創ラボラトリーを通じて、他社のノウハウや業務知識を吸収できるので、当社にもメリットが大きい」と高野研究主席は語る。