NTTドコモは2013年5月7日、第3世代携帯電話サービス「FOMA」のネットワークを使った「法人向け車載型パケット対応トランシーバサービス」(仮称)を開発、9月から提供開始予定であると発表した。同サービス向けに専用の料金プランも設ける予定である。想定するユーザーは業務用無線を利用している運送会社やタクシー会社などだが、乗用車を多数保有する企業や団体などの利用も見込む。

写真1●NTTドコモが参考出展している「法人向け車載型パケット対応トランシーバサービス」(仮称)
写真1●NTTドコモが参考出展している「法人向け車載型パケット対応トランシーバサービス」(仮称)
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 特徴は、(1)2GHz帯で提供しているFOMAおよび800MHz帯のFOMAプラスエリアでの使用が可能、(2)携帯電話網を使うため、従来の業務用無線のような無線免許申請や無線資格従事者による工事は不要、(3)オプションで簡易位置情報表示サービスを提供予定、(4)運行管理システムなどとの連携が可能、といった点。NTTドコモは同サービスを5月8日から都内で開催中の「ワイヤレスM2M展」に参考出展し、対応機種を展示している(写真1)。

 展示されている対応機種は、富士通テン製(写真2)とモバイルクリエイト製(写真3)の2機種でいずれも従来の車載機の形状を継承。音声通話は半二重通信で、無線機のボタンを押して交互に発話するといった使い方は通常のトランシーバーと同様だ。通常の携帯電話は道路交通法により自動車運転中の使用について罰則があるが、これら対応機種は従来の車載機同様、運転中でも使える。

写真2●富士通テン製の対応機
写真2●富士通テン製の対応機
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写真3●モバイルクリエイト製の対応機
写真3●モバイルクリエイト製の対応機
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 携帯電話網を使う業務用無線手段登場の背景には、既存の業務用無線のアナログ周波数からデジタル周波数への移行や、周波数再編によるMCA無線の周波数移行がある。例えば現行の900MHz帯のMCA無線(アナログ/デジタル)は、遅くとも2018年(平成30年)4月1日以降は使用できなくなる(総務省の資料(PDF))。そのためユーザーは機器の買い替えなどが必要となる。なおその際の費用負担の範囲は、MCA無線が使用していた周波数を新たに使用する認定開設者とユーザーとの間の協議によって決定する。

 一方、携帯電話事業者側としては、国内には既に1億超の加入者が存在しており、既存の市場はパイの奪い合いでしかない。そこでこれまでとは異なる携帯電話の市場として、M2Mなどが期待されている側面がある。車載型トランシーバーの市場もその一つで、国内における市場規模はおよそ180万台だという。こうした“新”市場に向けた競争も始まっており、既にソフトバンクテレコムは2013年2月、ソフトバンクモバイルの3G網を使った車載型トランシーバーサービスの提供を開始している。

 なお、NTTドコモは「プッシュトーク」のサービス名称で、話者がボタンを押すことで交互に通話する半二重通信の「プッシュ・ツー・トーク(Push-to-Talk)」(携帯電話で実現するものをPusu-to-Talk over Cellular、略してPoCと呼ぶ)を提供していたが(2010年9月に終了)、今回の車載型パケット対応トランシーバサービスの音声通信とは異なるものだという。

■変更履歴
当初第3段落目で「例えば900MHz帯の」としていましたが、正しくは「例えば現行の900MHz帯の」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。同じく3段落目で「ユーザーは機器の買い替えなどが必要となる」とありますが、その際の費用負担について補足しました。 [2013/05/09 13:15]