写真●4月24日に行われた、大企業とベンチャー企業の交流イベント「TOKYO IGNITION」
写真●4月24日に行われた、大企業とベンチャー企業の交流イベント「TOKYO IGNITION」
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 大企業とベンチャー企業との交流イベント「TOKYO IGNITION」が、2013年4月24日に開催された。主催は、大企業の新規事業にベンチャー企業の技術をマッチングさせる事業を推進しているcreww(クルー)、野村證券、トーマツベンチャーサポートの3社。

 今回のイベントの冒頭に講演したのは、駅ビルやショッピングモールを運営するルミネの元会長の花崎淑夫氏。花崎氏は「現在の日本の問題点は起業が少ないこと」という問題意識を示したうえで、ルミネ時代の自身の経験を踏まえつつ、大企業が手がける新規事業が伸び悩む原因を指摘した。具体的には、「大企業は既存事業の風土が強く、価値観の違う流れを生むのが難しい」「新事業部門に配属されても、本業のビジネスに帰りたい人が多い」「ほどほどの事業、なくても困らない事業をやりがち」などといったものだ。

 花崎氏は、これら課題の打開策として「多様性を認めて尊重する」「トップが価値観を転換する」といったポイントを示した。

 その後のパネルディスカッションには、ライブドアや弥生の社長を務めた平松庚三氏、クラウドワークス社長の吉田浩一郎氏、トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬氏、野村證券の塩見哲志氏、creww社長の伊地知天氏が登壇した。

 大企業とベンチャーがうまく共存共栄するためのコツとして、平松氏は「上から目線、下から目線をやめて、同じレベルで協力できること」を挙げた。大企業に所属する個人に向けて「ベンチャー企業との間で夢やリスクを共有し、単なるメッセンジャーではなくコーディネイターになってほしい」と要望した。

 吉田氏は、大企業と一緒に仕事をする際の三つのコツとして、「大企業のニーズに柔軟にこたえる」「熱意をもって臨む」「コンプライアンスを重視する」を挙げた。さらに吉田氏は、ベンチャー側に対して「大企業の担当者と仲良くなることが大事」とする。大手とベンチャーでは意見が食い違うことがあるが、大手企業の担当者がベンチャー側の味方になってもらうよう、援護する必要があるとの指摘である。

 斎藤氏は、ベンチャーの成功に必要なものとして「熱意」「数字」「政治」を挙げ、大企業との協業においては一方的なメリットでなく、双方のメリットを追い求めるべきとした。

 塩見氏は2013年初頭から毎週開催している早朝勉強会を紹介しながら、「社外との交流でいろいろな刺激があるが、最も刺激を受けるのはベンチャー企業の社長」「ベンチャーの動きを止めてはいけない」と、ベンチャー企業と大企業の交流の必要性を説いた。

 伊地知氏は「事業を通じて、すごくいいスタートアップがたくさんあることが分かった。大企業にすれば、一から作り上げるのではなく、技術を持っているところと組むことが大事だ」とした。さらに「単発のイベントを仕掛けるよりも、長期的に新規事業を作り上げていくほうが、大企業もベンチャーも盛り上がる」として、長期プロジェクトの成功事例を増やしたいという意向を示した。